副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
まぁ、専務は自分が社長になる上で、俺の存在が目の上のたんこぶなのだろう。
 

「ワールドもだいぶ客足が戻ってきましたね、直近は稼働率93%です。あれ、副社長、もしかして倉田さんのこと見に行きました?」

「あぁ、バレたか」

「ちょっと表情崩れてますから」

「大成」
 
「はい」

「今日も、澪は可愛かった」

「はぁ、って何の報告ですかそれは!?」
 

「デレデレしやがってちくしょう」とぶつぶつ言っているが、気にも留めない。澪が可愛いのは事実だから。

 
「副社長、水嶋専務が倉田さんに接触した件、どうします? 潰しましょうか?」

「そんな不穏なこと言うなよ」
 

大成は幼馴染だが、仕事中は基本的に敬語を使っている。「そこは仕事だから」と言っていたが、一緒にいる時は大体仕事なので、もうこのやり取りがデフォルトだ。


「澪にセクハラ発言したんだもんなぁ。やっぱり、潰すか」

「いや、アンタが言うと本当に息の根止められそうだし、なんか怖いからやめて」

「なんだよそれ」


先に「潰しますか」と言ったのは大成のくせに、プルプル震えている。そんなに俺から威圧的なオーラが出ていたのだろうか。


「まぁ、水嶋専務はもう少し証拠を揃えてからだな。出張先で愛人と会ってるのを接待費に計上してるのは序の口で、まだまだ芋づる式に出てきそうだし」
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