副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜

甘やかしたい?

早番2日目の業務を終えて、飛鳥さんのマンションに帰ってきた。今日は荒木さんの送迎が難しいと連絡があったので、普通に電車を乗り継いでの帰宅だ。

そして、飛鳥さんはもう東京に戻ってきているらしい。

(夜ご飯、何か用意した方が良いかしら)と思いつつ、副業の方の仕事も溜まっているので、リビングで少しだけ仕事しようとパソコンを開く。

 
「最新機能のローンチ内容をプレスリリースで打つ、か。何でもかんでもプレスを打てる訳じゃ無いから、本当は広報の全体戦略から相談したいなぁ」

 
私は空き時間を使って、ホテルのコンシェルジュアプリの会社で、広報の副業をしていた。

お金のため、というより、今後のキャリアを見据えた上での選択だ。ホテルの現場からバックオフィス業務に移れる人は数少ない。バックオフィスの人はそもそもあまり辞めないからだ。
 

結婚して子供が生まれてから、どこかでパート仕事をしながら時短で働く選択肢もある。でも、私は「仕事の幅を広げたい」と常々思っていた。

コンシェルジュアプリの会社では、広報経験がない私でも「ホテルでの経験があるなら、お客様とホテルの両視点で物事が見れる。貴重な人材だ」と評価してもらっての副業だった。

 
(ホテルは体力的にもキツイし、そろそろ転職も考えないとな。いや、七瀬ホールディングスの系列会社に転籍とかもありなのかな?)
 

ーーーガタガタ
ガチャッ

(あ、まずい、飛鳥さん帰ってきた)

時計を見ると、18時30分を指していた。少しだけ手をつけようと思ったら、随分と時間が経っていたようだ。
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