副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜

映画館デート


今日はとうとう、飛鳥さんとデートの日だ。
昨日はどうやって部屋に辿り着いたのか記憶がないが、ベッドの上で目が覚めた。

どういう訳かメイクもちゃんと落としているし、パジャマも着ている。寝ぼけながらいつも通りのルーティンをこなしたのだろうか。

疲れが溜まっていて、いつも以上にぐっすり寝てしまった。起きたら既に9時を回っていた。

 
「飛鳥さん、おはようございます。すみません、寝過ぎました…」
 

リビングで出会(でくわ)した飛鳥さんに、開口一番で謝罪する。

 
「おはよう。よく眠れたか?」

「はい、って、え?! 飛鳥さん、料理してます??」

 
よく見ると、飛鳥さんがキッチンに立って料理をしている。あの、料理をしないと言っていた飛鳥さんが、だ。若干焦げ臭いのは気のせいだろうか。

 
「すみません、私が寝過ぎたばかりに…。朝ご飯、作りましょうか?」

「いや、澪のために朝ご飯を用意したいなと思って、目玉焼きを焼いてたんだ。ちょっと火を入れ過ぎたけど……悪い、料理下手で」

「全然大丈夫です!むしろ、嬉しいです。私のために頑張って下さって」
 

飛鳥さんが用意してくれた目玉焼きやトースト、サラダ、スープが並んでいく。


「それでは、いただきます!」


飛鳥さんがじっと見つめてくる。目玉焼きをトーストに乗せて、パクッと食べた。

若干焦げ付いてはいるけれど、自分のために作ってくれたというのもあって、より美味しく感じる。


「美味しいです!」

「そうか、食べられるものになって良かった」
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