副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜

ホッと安堵する飛鳥さん。よく考えたら、休日に2人でゆっくり朝食を取るのは、初めてかもしれない。

 
「今日は映画館と水族館、どっちにしようか?」

「起きるのが遅くなってしまったのと、天気は明日の方が良さそうなので、今日は映画館でどうでしょうか?あ、そうだ、飛鳥さんに謝らないといけなくて」

「どうした?」

「見たい映画、調べるって言ったと思うんですが、あまりの忙しさに調べられませんでした……」

「あぁ、大丈夫だよ。映画館に行って、見たいものを探そう。ご飯食べたら出発な」

「はい」


ご飯を食べた後に服を着替えて、メイクをする。
 
段々暖かくなってきたので、今日はパステルグリーンのアンサンブルニットに白のレーススカート、黒ジャケットを合わせて春らしい装いを意識した。

メイクは、「アンシャンテ」というブランドの新作を引っ張り出した。コーラルピンクのリップで、大好きな春が近づいていることを感じて浮き足だってしまう。準備は万端だ。

飛鳥さんはというと、今日もカジュアルなジャケットスタイルだった。仕事の時と違う装いに、少し緊張してしまう。

2人でマンションを出ようとした時だった。


「澪」

「はい?」

「今日はこうやって過ごそう」


そう言って、手を握られる。しかも恋人繋ぎというやつで。内心は「ふぁぁ!?」と大騒ぎだった。

「は、はい」

2人で車まで移動する。飛鳥さんの運転で、映画館に辿り着いた。こういう時どんな映画を選ぶかで、その人の好みが分かりそうだ。
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