副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜

「澪は何が良さそう?」

「そうですね。うーん、どれにしようかな」


涙なくして見れないロマンス系、戦国時代を舞台にしたものやタイムスリップ系など、色んなジャンルの映画ポスターが並んでいた。

 
「あ、この監督の作品、他にも見たことあるんですが、凄く良かったんですよね。このアニメ映画とかどうですか?」

「澪は監督で選ぶタイプか。俺も前作はネット配信で見たから気になる。これにしようか」


そう言って詳細も見ずに、監督名とポスターの雰囲気で選んで3番スクリーンに入っていく。

内容は「南北で分裂した国同士の和平のために、偽りの夫婦を演じる国王と王女のラブストーリー」だった。
 

(偽りの夫婦って……私、チョイスミスった!?)


だらだらと冷や汗が出てくる。隣に座る飛鳥さんは特に気にするでもなく、普通に映画を見ていた。

映画はというと、「王女が浮気した!」と勘違いした国王が、浮気現場と踏んだ場所に牛に乗って突撃したり、王女は王女で「国王が浮気した!」と言って大量に大砲を用意したり、カオス過ぎて笑ってしまった。

全体的にコメディ調かと思いきや、後半は「偽りではなく本当の愛情が芽生えたけど、今さらどうしよう…」とすれ違いもあり、そして本当に結ばれた瞬間はもう涙が止まらなかった。

映画が終わって余韻に浸っていると、隣からクスクス笑い声が聞こえてきた。


「澪、笑ったり泣いたり、百面相になってたぞ」

「だ、だってぇ…」
< 56 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop