副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
鼻をずびずび言わせながら、気持ちを落ち着ける。飛鳥さんがポンポンと頭を撫でてきた。
「本当、澪は泣き虫だな」
(……泣き虫? 私、飛鳥さんの前で泣いたことないはずなんだけどな)
たまに、飛鳥さんの発言には引っかかることがある。まぁ、あまり深く考えなくてもいいかな?
「この後は一旦ご飯食べに行くか。映画館近くの入れるレストランで良いか?」
「はい、もちろんです。行きましょう!」
その後、ランチ営業もしているカジュアルなイタリアンバルに入った。生パスタランチセットをオーダーし、最近の仕事のことなど近況を話し始める。
「あ、そうだ。今日は仕事の話をしたかったんじゃなくて……飛鳥さんのこと、もっと知りたいんですよね」
「そうか、例えば?」
「えーと、じゃあ、ご出身は?」
ぷっと吹き出す飛鳥さん。
「はは、それじゃお見合いじゃないか」
「だって。じゃあ、ご趣味は?」
「質問の種類が変わってないぞ」
「えー、答えてくださいよぉ」
「出身は東京都港区。趣味は、そうだな……最近は、観葉植物とか?」
「あ、だから自宅に観葉植物があったんですね!好きな植物とかあるんですか?」
「そうだな、色々あるけど……ポトスは丈夫だし、綺麗だよな」
「ポトスですか。えーと、ポトスの花言葉は……あ、『永遠の富』って書いてあります。え、飛鳥さんまだ稼ぐんですか……?」
「『うわぁ、この人がめついな…』って顔するなよ。顔に全部出てるぞ? 俺は花言葉なんて知らなかったんだから。というか、なんで花言葉?」