副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜

酔っ払いと本音 -飛鳥side-


自宅マンションに戻ると、澪はローストビーフの下ごしらえを始めた。無意識に鼻歌を歌っていて、可愛いなと思ってしまう。

昔から澪のことは特別な存在だったが、一緒に過ごすほどに愛おしさが増していた。

下ごしらえをしている澪を見ていたくて、リビングのソファに座りながら、仕事の資料に目を通しているフリをしている俺はやっぱりヤバい奴なのだろうか。

とはいえ、澪が俺に対して、多少苦手意識があったことも事実だ。少しは心を開いてくれているかもしれないが、まだ油断してはいけない。
そう、なかなか踏み込めずにいた。
 

「飛鳥さん、下ごしらえ終わりました。あとは冷蔵庫で寝かせるだけです」

「そうか、ありがとう。早速、映画見るか?」

「はい、そうですね。1時間以上はお肉を寝かせたいので、映画1本は見れちゃいそうです」

「そうだな。何か見ようか」

 
そう言うと、澪はミックスナッツやチーズ、クラッカーなどおつまみを載せたお皿を持ってきた。そして、ワインも。

 
「お家で映画鑑賞といえば、これですよね」

「お、準備ばっちりだな。ありがとう」

 
せっかくなら、もっと澪と近づきたい。そう思って、澪に手招きする。


「澪、こっち来て」

「え?」

「ここ」
 

そう指を指したのは、自分の膝の上だ。それを見た澪は真っ赤になって、顔を隠そうとしている。でも全然隠れていないので、ただ可愛いだけだ。


「はい…座りますね?」
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