副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜

「澪、本当に美味しいよ」

「本当ですか? よかったです。私も、いただきます!」

 
幸せそうに食べる澪を見ていると、こちらまで満たされた気持ちになる。

他に用意してくれたものも、ついおかわりしてしまった。全て平らげて、体も心もすっかり満たされた。

 
「澪、片付けは俺がやるから、少しゆっくりしてて。他に見たい映画があれば、もう少し一緒に見ようか」

「ありがとうございます。じゃあお言葉に甘えて、少し休憩してますね」

 
もっと澪を甘やかしたいと思うのに、澪にしてもらうばかりだ。何か俺に出来ることはないだろうか? 出来る限り探していこう。
 
そして、また映画を2人で見始めた。澪はまた俺の膝の上に、ちょこんと座っている。今気づいたのだが、澪のワインを飲むスピードが上がっている気がした。


(澪って、お酒好きなのか? あんまり変な酔い方はしなそうだけど、どうなんだろう)

 
よく考えると、2人でお酒を飲むのは今日が初めてだ。多少飲みすぎてもここは自宅だし、明日も休みだから問題ない。

映画の途中で、突然くるっと澪がこちらを見上げる。

 
「澪、どうした? 他の映画に変えるか?」
 
「んー 飛鳥さんの顔が見たいなと思っただけ」

「もしかして、酔ってる?」

「酔ってないですよー」

 
こういう時「酔ってない」というやつは、大体酔ってる。大丈夫か?と少し様子を伺う。
すると突然、驚くことを言い始めた。


「飛鳥さん、今日もかっこいいね」

「っ!?」

 
さっきまで澪が真っ赤になっていたのに、次は俺が赤面してしまう。俺、澪にかっこいいって言われた? なにこれ、嬉しすぎるんだが。
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