副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
好きだと気付いてしまって
うっすらと光を感じて、目を覚ました。
昨日の記憶は、所々抜けている。
夜にローストビーフを食べて、また飛鳥さんと映画を見始めて、久しぶりにワインを沢山飲んで……問題はその後だ。
朧げな記憶ではあるが、飛鳥さんはかっこいいだの、自分のことをどう思っているのかだの、言いたい放題言ったような気がする。
夢だったような気もするが、多分、言ったんだろう。
(あぁ……恥ずかし過ぎて、もう無理。飛鳥さんの顔見れない…)
朝から布団にくるまって悶えてしまう。
「私、もう完全に飛鳥さんのこと好きじゃん…」
そう、気づいてしまった。
昨日飛鳥さんの膝の上に座りながら、背中に体温を感じて、もうずっとドキドキしていた。
今までも何度もドキドキしていたけど「偽装婚約者だから」と、自分の気持ちに蓋をして見ないようにしてきた。
飛鳥さんの気持ちを未だはっきりとは聞いていないので、私の片思いかもしれない。片思いだったら、この偽装婚約関係は終了……?
もっと一緒にいたいのに、この関係が終わるのも怖い。
それに、実はもう「お母さん」ポジションだったらどうしよう? 飛鳥さんには「女」として見てほしい、と思ってしまう。
「澪、起きた? 体調大丈夫そう?」
扉の向こうから、飛鳥さんの声が聞こえてきた。びっくりして飛び上がりそうになる。
「はい!すみません、昨日寝てしまって…軽くシャワー浴びて、準備しますね!」
大急ぎで身支度を済ませる。今日は少し遠い水族館に行く予定だ。
水族館なんて、何年ぶりだろう。
朝ごはんは昨日のご飯の残りを食べて、早速水族館に向けて出発した。
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