副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜

そして、雨足は強くなる


いつも通り、5時ぴったりに目が覚めた。
でも、いつもと違うのは、それが飛鳥さんの腕の中ということだ。

見上げると、飛鳥さんはスースーと小さな寝息を立てながら寝ていた。寝顔が愛おしくて、何だか起こしてしまうのも勿体無い。

先に準備を始めようと、飛鳥さんの腕から抜けようとした。が、なぜか「ぎゅうぅぅぅ」とがっちりホールドされている。
 

「……飛鳥さん? おはようございます」

「んん、澪、おはよ」


目を瞑っているが、どうやら起きていたようだ。寝たふりだったのか。

 
「飛鳥さん、起きれそうですか?」

「んー、まだ澪と一緒にいたい」

 
あぁ、寝起きの飛鳥さんは甘えるタイプなのか。可愛いけれど、ここは心を鬼にしないといけない。

 
「ほら、一緒に行きますよ」

「仕方ない…起きるか」

 
そうして、2人で軽くご飯を食べて、支度をする。
 

「あ、飛鳥さん。今日あまり天気が良くなさそうです。福岡まで気をつけてくださいね?」

「ん、わかった。澪も不在の間、気をつけてな。今回は大成も福岡に行ったり東京に戻ったりで、常に澪の近くにいられる訳でもないからな。何かあったら、すぐに連絡するんだぞ?」

「分かりました。気をつけて過ごすようにしますね」

 
そうして、私達はそれぞれの行き先に向かった。私はホテルへ、飛鳥さんは空港へ。


***

 
「澪、おはよう」

「玉ちゃん、お疲れ。夜勤明け?」

「そうなの、もうすぐ上がる〜。あ、澪に新情報」

「何?」

「水嶋専務の秘書、また変わったらしいよ?」

「えぇ、もう何人目? 本当によく変わるわね」
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