副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
「三浦様、対応が遅くなり申し訳ございません。空調の様子がおかしいと伺いました。拝見して宜しいでしょうか?」

「ん、やっと来たか。頼む」

「はい、失礼致します」


部屋に入ると、ひんやり冷えている。3月下旬とはいえ、まだ朝晩は冷えるのでこれでは寒い。
エアコンのリモコンを確認すると、かなり低く設定されている。
 
昨日から連泊されている方なので、ご自身で何らか操作したか、メイドさんがチェックイン前の清掃時に直さず、チェックをするインスペクターも気が付かなかったか……。


「今、リモコンで温度調整したので問題ないかと思いますが、他のお部屋に移動頂くことも可能ですし、宜しければ貸し出し用の毛布をお持ちすることも可能です。いかがなさいますか?」

「いや、部屋は移動したくない。毛布で良い」

「承知しました。……お連れ様がいらっしゃいますよね。毛布は2枚で宜しいでしょうか?」

「あぁ、そうだ。2枚で頼む。あんた、名前は?」

「客室課の倉田と申します。それでは、2枚毛布をお持ち致します」
 

スッとお辞儀をして、退室した。フロントにも連絡をし、ルームチェンジの必要がなくなったことと、毛布を持っていく旨を伝えた。そして、再度お部屋に伺い、毛布をお渡しして対応は終了した。
 
何とか今日の早番も終えて、帰ろうとした時、ふと「何か忘れてるな……あ、竹田さんが他にも共有があると言ってたな」と思い出した。急いでフロントに電話をかける。


「お疲れ様です。客室課 倉田です。……あ、竹田さんですね」

「はい、倉田さん、どうされました?」
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