副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
竹田さんには「どこに集合しましょうか? 18時過ぎなのでご飯も兼ねて、ホテルから少し離れたレストランはいかがですか?」と返信し、

飛鳥さんには「ありがとうございます、早く寝ますね」と返信しておいた。

竹田さんと会うことを飛鳥さんに連絡した方が良いかな? と一瞬思ったけれど、連絡するほどのことではないと思い、特に伝えなかった。


***

 
次の日、久しぶりの日勤でインスペクター業務だ。いつも一緒に業務をすることがないメイドさんにも、始業のタイミングで挨拶をする。

フロントからの電話も、『元々チェックイン予定だった人を別の部屋にアサインしました』など、予約変更の電話がたまにあるくらいだ。

水嶋さんからの嫌がらせを気にすることなく、業務に集中することができた。


そして、あっという間に引き継ぎも終え、帰り支度を整える。竹田さんからメッセージが入っていた。


「先にレストランに移動していますね。ゆっくり来てください」

「分かりました、お待たせしてすみません」と返信して、私もホテルを出た。


事前にやり取りしていたレストランに向かうと、2人席に座る竹田さんがこちらに向かって手を挙げた。

 
「遅くなってしまってすみません」

「いえ、僕も少し前に来たので。倉田さん、何か飲みますか?」

「あ、今日はお酒はやめておきます。ノンアルコールで、この炭酸水にします」

「僕は明日休みなので、お酒でもいいですか?
 ……それじゃあ、ビールで」


竹田さんと2人でご飯を食べに行くのは、初めてだ。客室課内でも同じ時間に上がれることは滅多にないし、部署を超えてとなると、よほど仲が良い場合を除いてご飯に行くことはあまりない。

ただ、みんな飲み会自体は大好きなので、送別会などは盛大にやっている。
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