副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
「誰がこんなことを……それに、男女の関係なんてないです」
「だよなぁ、この写真だけで男女関係っていうのもちょっと無理がある気がするけど。それに倉田は何人も同時に相手できるほど、器用じゃないもんな。俺と違って」
「庄司さん、その発言はちょっと…」
「で、異性としての交友もない訳だ。全社員に送るって相当悪意を感じるよな。2人の仲を割きたい奴に覚えはあるか?」
「それは、水嶋専務か水嶋美子ですかね…もしくは竹田さん?」
「まぁ竹田は純粋にお前のことが好きみたいだけどな。となると、水嶋親子か。はぁ、俺の部署の社員をいじめやがって」
いつも飄々としている庄司さんが、珍しく怒っているのが分かる。こういう上司がいるだけで救われるなと思った。
「メールの発信元が誰なのか調べるよう、俺もシステム部の部長には掛け合うから。まぁ、とっくに副社長が動いていると思うけど」
「ありがとうございます。確かに、副社長も動いてそうですよね」
「……倉田、副社長のこと、ちゃんと好きか?」
「はい。大事に思っています」
「じゃあ、ちゃんとお互いコミュニケーション取るんだぞ? お前、竹田と2人で会うことは言ってあったんだよな?」
「それが……」
そう、言ってない。まさかこんなことになると思わなかったし、私は何も特別な感情を抱いていなかったから、ただ同僚とご飯に行くのに連絡は要らないと思ってしまった。
「あ〜言ってないのか。倉田、そう言うのが男女の揉める原因になるんだからな」