副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
「椿さんと飛鳥さんは昔付き合ってたって、竹田さんから聞いたから、飛鳥さんに直接聞いたんだけど。そんな過去の話はしなくて良いってはぐらかされちゃって。私にとっては『そんな話』じゃないのに」
「そうだったんだ、それは気になるよね。もう昔のこととはいえさ……。それにあの写真を見た感じじゃ、今も会ってるんでしょう?」
「うん、椿社長との会食に、麗香さんもよく顔を出してるみたい。でも、会食に子供の参加も許してるって、親としては結婚させたいんじゃないかな?とか、色々考えちゃって」
「そっかぁ……副社長もちゃんと説明してくれたら良いのに。全く、言葉が足りないなぁ!」
こうやって話を聞いてくれるだけでも、有難い。
1人でいると塞ぎ込んでしまいそうだったから。
「それで、椿麗香さんの件で喧嘩しちゃったってわけ?」
「それだけじゃなくて……竹田さんとの写真を撮ったのって、水嶋専務が依頼した探偵だったみたいで。探偵が私の動きを張ってること、飛鳥さんは分かってたみたい。
……それも教えてくれないし、囮にされたみたいで悲しくて。それで、もう話もしたくなくなって、途中で電話切っちゃったんだよね」
「え!?なにそれ、信じられない!! じゃあ澪が危ない目に遭うかもしれないって、分かってたってこと!?」
玉ちゃんがヒートアップしている。でも、玉ちゃんの言う通りだ。もしかしたら危ない目に遭っていたかもしれないが、その時飛鳥さんはどうするつもりだったんだろう?
でも、このまま飛鳥さんと別れるかと問われると、まだはっきりとは答えが出せないでいた。