副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
誰かに頼るということ
急いで部屋に入るが『交通事故』というキーワードがチラついて、両手で体の震えを抑えるようにして座り込んでしまった。
(こわい、どうしよう、飛鳥さんまで交通事故だなんて……私、疫病神なの…?)
真っ暗な部屋の中で、1人うずくまる子供の頃の自分が見えるようだった。
父が亡くなった後、母や蓮の前ではなるべく泣かないようにずっと気を張っていた。でも一人になった時やみんなが寝静まった後、一人で声を殺して沢山涙を流してきた。
今日も、夜が明けるまで何かに怯えてうずくまっているかもしれない。でも……
『ちゃんとお互い話し合って、不安を解消したりするのは大事だと思ってる。周りが何と言おうと、俺が大事に思っているのは澪だから』
『私も、いつも澪の味方だよ? それに、澪がどんな選択をしても受け入れるし、応援してるから』
『副社長、変わりましたよ。あの人を変えたのは、倉田さんです』
飛鳥さんや玉ちゃん、荒木さんの言葉を思い出す。それだけではまだ「飛鳥さんなら大丈夫、信じて待とう」と言い切る自信はない。
けれど、私は初めて、人に頼る決心をした。
「……もしもし、薫さん?」
「澪ちゃん、どうしたの? 珍しい、というか僕に電話をしてくるのは初めてだよね」
そう、私が電話をしたのは、母の再婚相手であり医者の薫さんだった。
「ごめんなさい、今お仕事中ですか?」
「いや、今日はもう自宅に戻ってきてるよ。何かあったの? あ、清香さん、澪ちゃんから電話」
そう言って、近くにいるであろう母に声をかける。
「それが、飛鳥さんが交通事故に遭ったらしくて」
「なんだって、七瀬さんは今どういう状況なんだい?」
(こわい、どうしよう、飛鳥さんまで交通事故だなんて……私、疫病神なの…?)
真っ暗な部屋の中で、1人うずくまる子供の頃の自分が見えるようだった。
父が亡くなった後、母や蓮の前ではなるべく泣かないようにずっと気を張っていた。でも一人になった時やみんなが寝静まった後、一人で声を殺して沢山涙を流してきた。
今日も、夜が明けるまで何かに怯えてうずくまっているかもしれない。でも……
『ちゃんとお互い話し合って、不安を解消したりするのは大事だと思ってる。周りが何と言おうと、俺が大事に思っているのは澪だから』
『私も、いつも澪の味方だよ? それに、澪がどんな選択をしても受け入れるし、応援してるから』
『副社長、変わりましたよ。あの人を変えたのは、倉田さんです』
飛鳥さんや玉ちゃん、荒木さんの言葉を思い出す。それだけではまだ「飛鳥さんなら大丈夫、信じて待とう」と言い切る自信はない。
けれど、私は初めて、人に頼る決心をした。
「……もしもし、薫さん?」
「澪ちゃん、どうしたの? 珍しい、というか僕に電話をしてくるのは初めてだよね」
そう、私が電話をしたのは、母の再婚相手であり医者の薫さんだった。
「ごめんなさい、今お仕事中ですか?」
「いや、今日はもう自宅に戻ってきてるよ。何かあったの? あ、清香さん、澪ちゃんから電話」
そう言って、近くにいるであろう母に声をかける。
「それが、飛鳥さんが交通事故に遭ったらしくて」
「なんだって、七瀬さんは今どういう状況なんだい?」