副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
夜が明けて、お昼過ぎにホテルに到着する。久しぶりの遅番業務をこなした。
以前、遅番でトラブルがあった時に、飛鳥さんに車で迎えてにきてもらったのも、随分前のように感じてしまう。
ばたばたと仕事をこなしていたら、あっという間に終業時刻になった。やっとゆっくりスマホを見れる、と思って開くと、荒木さんからメッセージが1件届いていた。
「精密検査の結果、脳に特に異常はありませんでした。また、事故から24時間経過したので、重篤な事態になる可能性も下がりました。明日一旦、東京に戻る予定です。また無茶しそうなので、見張りをお願いします!」
「はい、わかりました、と」
(見張りって……相変わらず荒木さんは面白いな)
何もないことが分かって、ホッとする。やっと肩の力が抜けたような気がした。
明日は飛鳥さんの喜びそうなご飯を作ろうかな?
そんなことを考えながらマンションに向かい、その後はバタッとベッドに倒れ込むように寝てしまった。
***
土曜日、今日は1日休みだ。そして、飛鳥さんが帰ってくる日でもある。午前中はスーパーに、食材の買い出しに向かった。
(ご飯、何が良いかな。特別な時は、やっぱり卵をいっぱい使ったオムライスかな)
そんなことを考えながら、食材をカゴに入れていく。スーパーからの帰り道、たまたま観葉植物が並んでいる花屋さんを見つけた。飛鳥さんが趣味と言っていたので、私も自然と目がいってしまう。
「あ、これ良いかも」
何となく、モンステラの小さな鉢植えを購入してしまった。
そして、マンションに着いて、食材を冷蔵庫に入れている時だった。