副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
ーーーガタガタッ
ガチャッ
(あ、飛鳥さんが帰ってきた…!)
急いで玄関まで迎えに行く。出張に行く前と変わらない飛鳥さんが、そこには立っていた。
「飛鳥さん、おかえりなさい」
「澪、ただいま。……いなくなってたら、どうしようかと思った」
そう言って、玄関先でぎゅぅっと抱きしめられる。久しぶりに飛鳥さんの匂いがして、凄く落ち着いた。
「自分のマンションに帰ろうかな、とは思いました」
「え!……やっぱり?」
飛鳥さんが悲しげな顔をこちらに向ける。
でも、
「……と思ったんですけど、事故にあった人を置いてはいけません。それに、飛鳥さんとちゃんと話したいと思いました」
「澪……」
「飛鳥さん、オムライスの食材買ってきたんです。お昼か夜に食べませんか?」
「あぁ、ありがとう。まだ昼も食べてないから、昼ご飯でも良いかな? まずは荷物置いてくる」
冷蔵庫に入れたばかりの食材を引っ張り出し、卵をたっぷり使ったとろとろオムライスを作った。
作るのは久しぶりだったけれど、上出来だ。
テーブルに料理を並べ始めると、荷物を置いて普段着になった飛鳥さんが現れた。
椅子に座る前に、先ほど「なんとなく」で購入した、モンステラの存在に気がついた。
「澪、これは? モンステラ、だよな」
「はい、さっき見つけて、なんとなく買っちゃいました」
「モンステラの花言葉、知ってて買ったの?」
「いえ、特に調べてませんけど……え、飛鳥さん、花言葉分かるんですか?!」