許嫁のパトリシアは僕をキープにしたいらしい
「……アクアが全然私のことを好きじゃないから泣いてるの」
「ええ? えっと……好きだよ?」
そんなわけないじゃない。
「好きだったら、もっと私に文句を言うはずでしょ!」
「そう言われても、好きだから文句を言ってないんだよ」
「はあ?」
「だってね、たぶん好きじゃなかったら、キープにすると直接言われたら怒ると思うんだ、普通は」
「そ、そうね」
そんな普通の価値感を持っていたのね。
許嫁がいながらも運命の出会いを求めて活発に動いている人は多いので、キープが横行していると言えるけど……そこは暗黙の了解だ。わざわざ言わない。
逆に、許嫁に心変わりされないよう目障りなくらいにイチャついているカップルもまた多い。そんな複数の友人カップルに協力をお願いした。デートしたことにしてもらったり、アクアの反応を見てきてもらったり。「気にしていないとしか答えてもらえなかったわ」とすごく同情された。そのあと、アクアが私に探りを入れる様子もなかった。
惨めだった。
「僕はパトリシアが好きだ。戻ってくれたら嬉しい。だから文句を言うわけがないんだよ」
「な……」
「でもパトリシアにとってはつまらない男だろうしね。そこは諦めてる」
「あ、諦めないで! 好きなら諦めないでよ!」
「ええ〜」
私たちの間には何か齟齬があったのかもしれない。
言うしかない。
ずっと私たちの温度差が明らかになるのが怖かったけど、もう言うしかない。
「私はアクアが好きなの! でもアクアは全然私のことを好きじゃない。私について興味がないから何も質問してくれないし、おざなりな返事ばっかり。他の人と付き合うって言っても嫌な顔すらしてくれない。私があげたプレゼントも一度も使ってくれない」
「僕はパトリシアが好きだよ。君は話すのがうまいから、自分から言わないことは聞かれたくないのかなって思うし、迷惑に思われたくなくて何も口にできない。返事も苦手だ。すぐに言葉が出てこない。他の人と付き合うのも仕方ないと思っていた。プレゼントは汚したくないし、大事にしまってあるよ」
「……許嫁なのに手も繋いでくれない」
「僕と手を繋いで嬉しい女の子なんて、いるわけがないよ」
私は、そっと彼の手を握った。すごく不満だ。本当はアクアの方から握ってほしかった。
「ええ? えっと……好きだよ?」
そんなわけないじゃない。
「好きだったら、もっと私に文句を言うはずでしょ!」
「そう言われても、好きだから文句を言ってないんだよ」
「はあ?」
「だってね、たぶん好きじゃなかったら、キープにすると直接言われたら怒ると思うんだ、普通は」
「そ、そうね」
そんな普通の価値感を持っていたのね。
許嫁がいながらも運命の出会いを求めて活発に動いている人は多いので、キープが横行していると言えるけど……そこは暗黙の了解だ。わざわざ言わない。
逆に、許嫁に心変わりされないよう目障りなくらいにイチャついているカップルもまた多い。そんな複数の友人カップルに協力をお願いした。デートしたことにしてもらったり、アクアの反応を見てきてもらったり。「気にしていないとしか答えてもらえなかったわ」とすごく同情された。そのあと、アクアが私に探りを入れる様子もなかった。
惨めだった。
「僕はパトリシアが好きだ。戻ってくれたら嬉しい。だから文句を言うわけがないんだよ」
「な……」
「でもパトリシアにとってはつまらない男だろうしね。そこは諦めてる」
「あ、諦めないで! 好きなら諦めないでよ!」
「ええ〜」
私たちの間には何か齟齬があったのかもしれない。
言うしかない。
ずっと私たちの温度差が明らかになるのが怖かったけど、もう言うしかない。
「私はアクアが好きなの! でもアクアは全然私のことを好きじゃない。私について興味がないから何も質問してくれないし、おざなりな返事ばっかり。他の人と付き合うって言っても嫌な顔すらしてくれない。私があげたプレゼントも一度も使ってくれない」
「僕はパトリシアが好きだよ。君は話すのがうまいから、自分から言わないことは聞かれたくないのかなって思うし、迷惑に思われたくなくて何も口にできない。返事も苦手だ。すぐに言葉が出てこない。他の人と付き合うのも仕方ないと思っていた。プレゼントは汚したくないし、大事にしまってあるよ」
「……許嫁なのに手も繋いでくれない」
「僕と手を繋いで嬉しい女の子なんて、いるわけがないよ」
私は、そっと彼の手を握った。すごく不満だ。本当はアクアの方から握ってほしかった。