私の推しは私の推し
5.プライベートで(前半)
「マコ、マコってば!」
「ひゃい!」
布団から勢いよく起き上がり何故か咄嗟に正座をする。
その様子を肩を振るわせ笑うココロ。
恥ずかしくなり立ち上がると、美味しそうな食べ物の匂いで目が醒める。
ユラが朝食の準備をしているのだろう。
「ほんと中々起きないんだから……」
「ごめん〜。ココロ、起こしてくれてありがとう」
「今日はライブの反省会するわよ」
「うん。早めに終わらせて遊ぼうねって私が言った」
「覚えてるのならよろしい」
ココロに頭を撫でられた。その姿は、昨日のだらしない姿が嘘のように爽やかだ。
「できたで〜。トーストと目玉焼き、あとベーコン。サラダはレタスとトマト、きゅうり。スープはコンポタで」
綺麗な彩りに思わず「写真撮ってもいい?」とユラを見る。
「もちろん! せっかくなら投稿しとこ」
複数枚写真を撮りユラお手製の朝ごはん! と書き、投稿。すぐにいくつか反応があるが、とりあえず確認は後で。
「いただきます」
タイミングを合わせたわけでもないのに3人同時に手を合わせ、軽く会釈する。
そこからは自由で「うちはコンポタ以外全部トーストに挟んで食べるんや」と目玉焼きやベーコン、そして綺麗に並べたサラダを全てトーストを半分に折り無理矢理挟んでいく。
溢れんばかりのトーストに齧り付くユラに対し、ココロはサラダをそのまま食べている。
目玉焼きの黄身の部分のみトーストにかけて、時々サラダを少し乗せて食べたりもしている。
「個性」
「マコはピリ辛ドレッシング自作してかけるやん」
「辛いの最高〜」
可愛い売りということもあって、甘いものを食べている写真ばかり撮るが、実際は辛いものの方が好きだ。
そのため、こうしてプライベートの時は辛いものを食べがちだ。
「……さて、こっからは反省会や。それが終わったらショッピングにでも行こか」
「賛成〜。中華屋さん行きたい」
「もうお昼ごはんの話? あたしは雑貨見たいのよね」
「お、ええね。うちも見たいもんがあるんよ」
ささっと終わらせよか〜。と緩く言いつつも映像を真剣に見直す。そして互いに指摘したり褒めあったり。真面目に取り組む2人は最高にかっこいい。
私は時々会場の熊ちゃんを見ていたが、きっと2人にはバレていたことだろう。
咎められなかったのは、私がミスが少なく熊ちゃんのために頑張っているようなものだからだと勝手に解釈をしている。
街へ繰り出し雑貨や服など、行く店を決めずに歩く。
東京は芸能人とか顔のいい人とか沢山いるから私たちがまさかアイドルとは思わないだろう。
……まだあんまり売れてないし。
それもあってか、知らない人に声をかけられることもなく、堂々とショッピングを楽しんでいる。
「そろそろお腹も空いてきたし、中華屋さん探しましょ」
「中華でいいの?」
「じゃないと言わないわよ。あたし火鍋食べたい」
「火鍋! 私も食べたい! 辛いやつ!!」
「うちは辛いのあんま食べられんから、白湯スープも頼ませてほしいわ〜」
「もちろんだよ〜。白湯も美味しいよね」
ココロはスマートフォンを取り出し近くで火鍋が食べられるところをすぐに検索し始めた。
マッピングを済ませ、「行くわよ」と迷わずに歩き出す。
「頼れるお姉ちゃんだー」
「このまま奢ってくれへんかな〜」
「いいわよ。儲かったから」
競馬用のアプリを開き、受け取った金額を見せてもらい、私とユラは「おおー」と口を揃えて言う。
ココロは得意げに鼻を鳴らした。どうやら自分の推している馬が勝ったらしい。
「推しが強いのはテンションあがるね」
「応援しがいがあるわな」
「あたしらも応援しがいがあるように頑張るわよ」
「はーい」
「もちろんや」
店に到着し店員さんに「先ほど予約した〜」とスマートフォンの画面を見せすぐに奥へと通してもらう。
席まで案内してもらった後、火鍋の注文をすぐに店員さんに言い一息。
「あ、ここ水はセルフなんだ。私行ってくるね」
荷物よろしくと言い残し、ドリンクバーへと一直線。
人数分の水を準備して席へと戻る途中、聞き慣れた声に思わず足を止める。
熊ちゃんの声がしたような……。辺りを見渡すがそれらしき影は見当たらない。聞き間違いか。
きっとこの話をすれば、「ついに幻聴でも聞こえ始めたか」と言われかねない。黙っていよう。
そう心に誓って席へと戻った。
仕事の話はせず、たわいない話をして時間を潰す。明日は仕事だが、外出時は特にだ。
理由としては機密情報の漏れやモチベーションダウンの問題があるからだ。
まもなく火鍋が到着し、それぞれ好きなように食べる。その時でもたわいない話は続き、自分たちの会話のネタの多さに驚いてしまうほどだ。
……と言っても、テレビで見た芸能人の話や化粧品の話、服の話。思い出した話を皆で意見交換や感想として話しているだけなのだが。
「……く、熊ちゃん!?」
「え?」
「あ……」
「ひゃい!」
布団から勢いよく起き上がり何故か咄嗟に正座をする。
その様子を肩を振るわせ笑うココロ。
恥ずかしくなり立ち上がると、美味しそうな食べ物の匂いで目が醒める。
ユラが朝食の準備をしているのだろう。
「ほんと中々起きないんだから……」
「ごめん〜。ココロ、起こしてくれてありがとう」
「今日はライブの反省会するわよ」
「うん。早めに終わらせて遊ぼうねって私が言った」
「覚えてるのならよろしい」
ココロに頭を撫でられた。その姿は、昨日のだらしない姿が嘘のように爽やかだ。
「できたで〜。トーストと目玉焼き、あとベーコン。サラダはレタスとトマト、きゅうり。スープはコンポタで」
綺麗な彩りに思わず「写真撮ってもいい?」とユラを見る。
「もちろん! せっかくなら投稿しとこ」
複数枚写真を撮りユラお手製の朝ごはん! と書き、投稿。すぐにいくつか反応があるが、とりあえず確認は後で。
「いただきます」
タイミングを合わせたわけでもないのに3人同時に手を合わせ、軽く会釈する。
そこからは自由で「うちはコンポタ以外全部トーストに挟んで食べるんや」と目玉焼きやベーコン、そして綺麗に並べたサラダを全てトーストを半分に折り無理矢理挟んでいく。
溢れんばかりのトーストに齧り付くユラに対し、ココロはサラダをそのまま食べている。
目玉焼きの黄身の部分のみトーストにかけて、時々サラダを少し乗せて食べたりもしている。
「個性」
「マコはピリ辛ドレッシング自作してかけるやん」
「辛いの最高〜」
可愛い売りということもあって、甘いものを食べている写真ばかり撮るが、実際は辛いものの方が好きだ。
そのため、こうしてプライベートの時は辛いものを食べがちだ。
「……さて、こっからは反省会や。それが終わったらショッピングにでも行こか」
「賛成〜。中華屋さん行きたい」
「もうお昼ごはんの話? あたしは雑貨見たいのよね」
「お、ええね。うちも見たいもんがあるんよ」
ささっと終わらせよか〜。と緩く言いつつも映像を真剣に見直す。そして互いに指摘したり褒めあったり。真面目に取り組む2人は最高にかっこいい。
私は時々会場の熊ちゃんを見ていたが、きっと2人にはバレていたことだろう。
咎められなかったのは、私がミスが少なく熊ちゃんのために頑張っているようなものだからだと勝手に解釈をしている。
街へ繰り出し雑貨や服など、行く店を決めずに歩く。
東京は芸能人とか顔のいい人とか沢山いるから私たちがまさかアイドルとは思わないだろう。
……まだあんまり売れてないし。
それもあってか、知らない人に声をかけられることもなく、堂々とショッピングを楽しんでいる。
「そろそろお腹も空いてきたし、中華屋さん探しましょ」
「中華でいいの?」
「じゃないと言わないわよ。あたし火鍋食べたい」
「火鍋! 私も食べたい! 辛いやつ!!」
「うちは辛いのあんま食べられんから、白湯スープも頼ませてほしいわ〜」
「もちろんだよ〜。白湯も美味しいよね」
ココロはスマートフォンを取り出し近くで火鍋が食べられるところをすぐに検索し始めた。
マッピングを済ませ、「行くわよ」と迷わずに歩き出す。
「頼れるお姉ちゃんだー」
「このまま奢ってくれへんかな〜」
「いいわよ。儲かったから」
競馬用のアプリを開き、受け取った金額を見せてもらい、私とユラは「おおー」と口を揃えて言う。
ココロは得意げに鼻を鳴らした。どうやら自分の推している馬が勝ったらしい。
「推しが強いのはテンションあがるね」
「応援しがいがあるわな」
「あたしらも応援しがいがあるように頑張るわよ」
「はーい」
「もちろんや」
店に到着し店員さんに「先ほど予約した〜」とスマートフォンの画面を見せすぐに奥へと通してもらう。
席まで案内してもらった後、火鍋の注文をすぐに店員さんに言い一息。
「あ、ここ水はセルフなんだ。私行ってくるね」
荷物よろしくと言い残し、ドリンクバーへと一直線。
人数分の水を準備して席へと戻る途中、聞き慣れた声に思わず足を止める。
熊ちゃんの声がしたような……。辺りを見渡すがそれらしき影は見当たらない。聞き間違いか。
きっとこの話をすれば、「ついに幻聴でも聞こえ始めたか」と言われかねない。黙っていよう。
そう心に誓って席へと戻った。
仕事の話はせず、たわいない話をして時間を潰す。明日は仕事だが、外出時は特にだ。
理由としては機密情報の漏れやモチベーションダウンの問題があるからだ。
まもなく火鍋が到着し、それぞれ好きなように食べる。その時でもたわいない話は続き、自分たちの会話のネタの多さに驚いてしまうほどだ。
……と言っても、テレビで見た芸能人の話や化粧品の話、服の話。思い出した話を皆で意見交換や感想として話しているだけなのだが。
「……く、熊ちゃん!?」
「え?」
「あ……」