激モテ生徒会長の暗証番号は子猿な私の誕生日と一緒~こんな偶然ってあるだなぁ、と思っていたらなんだか溺愛されてるような?~
第1話 激モテ生徒会長の暗証番号が、私の誕生日と同じ!?



〇オープニング、高校の廊下(九月で二学期の始業式の日)



生徒1「おはよー子猿、一学期ぶり~」
るる「おっはよー。夏休み終わっちゃったねー」

生徒2「子猿ちゃん、生徒会の先生が呼んでたよ」
るる「わかった、ありがとー」

ブレザーの制服姿で廊下を歩きながら、周りから声をかけられているのは小笹るる(こざさるる)。
明るい笑顔のるるは小柄なお子様体型で、ショートヘアの前髪の一部を飾りがないシンプルなヘアピンで留めている。

――私は小笹るる、高校二年生。この見た目と名前から、あだ名は「子猿」「子猿ちゃん」――
――そう呼ばれるのは慣れている。つらいと感じたのは中学三年生のあの時だけ――





〇(回想)中学校体育倉庫そば(部活後)



陸上部の部活終了後、男子数名が体育倉庫そばの水道で水飲み休憩をしている。
その中には、るるの初恋の相手、矢能テツ(やのうてつ)もいた。
テツはツンツンした茶髪で、るると部活もクラスも同じ。



男子生徒1「テツが子猿からラブレターもらったってよ!」

男子生徒2「子猿が手紙で告白って、笑える」

男子生徒3「つきあっちゃえば。性格はいいじゃん」

テツ「いやいや無理だって。子猿は恋愛対象外だろー」



そうだよなー、と笑う声がハードルを片付けに倉庫へ行こうとしていたるるの所まで聞こえてきた。

るるの居場所が死角になっていて男子たちは、るるの存在に気づいていない。



るる(そっか、男子がみんな笑うくらい私は『恋愛対象外』なんだ……)



そう考えてしまったるるの表情はとても暗い。
涙をこらえながら、るるはその場を離れる。



るる(今日が部活引退の日でよかった。明日からテツと話さないですむ)



(回想終了)





〇高校の教室



るるが教室に入ると、黒髪ストレートヘアで容姿端麗な女生徒かやのと、ゆるふわポニーテールがよく似合う華やかな女生徒リコが待っていた。



リコ「こざ、遅かったね~。始業式に間に合わないかと思った」

るる「生徒会の先生に呼ばれてたの。放課後に会計の仕事を手伝うことになったから資料とか用意してて遅くなっちゃった」

かやの「副会長だからって先生たちは、こざに頼りすぎなのよ。たまには断ってもいいんじゃない?」



リコもかやのも、るるのことを心配している。

――高校で出会ったリコと、かやのは私のことを「こざ」と呼ぶ少数派だ――

――ちなみにふたりとも、彼氏がいる――



リコには『彼氏は大学生』、かやのには『同い年の彼は男子校』と矢印で示されている。

体育館へ向かうため、るるとリコとかやのの三人は廊下に出て歩き始めた。



るる「会計がひとり欠員だから、しばらく生徒会最優先でがんばるよ」

リコ・かやの「こざは周りのために頑張りすぎるから心配」



リコとかやのはふたりそろって、ため息をついている。





〇体育館(始業式)



全校生徒が体育館内に並ぶなか、ステージ上で聖道 政近(せいどうまさちか)が生徒代表の言葉を述べている。

政近はさらりとした艶のある黒髪で眉目秀麗、スタイルも良い。



政近「二学期を迎え、生徒会では……」



あちらこちらから、女生徒たちの囁きが聞こえてくる。



女生徒1「かっこいい……」

女生徒2「やっと会えた~」

女生徒3「声ずっと聞いていたい」

女生徒4「夏休み寂しかったぁ」

「眼福……」と呟きながら祈るような仕草で目を閉じている女生徒もいる。



るる(相変わらず凄い人気だな、生徒会長の聖道くん。女子には塩対応だけど)



女生徒たちから政近へ向けられるハート満載の熱視線に対して、ステージ上の政近からは吹雪いているかのような冷たいオーラが発生していた。



――この学校の生徒会役員選出は、推薦で始まり本人の承諾を得て決定する――

――文武両道で先生からの信頼も厚く、男子にとっては憧れの存在で女生徒からは圧倒的な支持を得ている聖道くんが生徒会長になることは早い段階で予想できた――

――生徒会長が男子生徒の場合、副会長は女子から選出される――

――そこで、激モテな聖道くんと一緒にいても恋愛関係になるはずがなく無害だからという理由で女子に支持され、私が副会長になったのだ――



るる(私は『恋愛対象外』だから)



トホホ……と、しょぼくれている、るる。

そんなるるをステージ上から見つけた政近は、耳をペタリと下げた可愛い仔犬がクゥンと鳴いているように見えて思わずほんのかすかに口角を上げ微笑んだ。





〇教室と、生徒会室前の廊下(始業式後)



かやの「始業式直後から生徒会の活動なんて大変ね」

リコ「なんか手伝えることあったら言うんだよ」

るる「ありがとう。ふたりともまた明日ね」



かやのとリコに手を振って、るるは教室から出て行く。



るる(もう聖道くんたち来てるかな)



生徒会室に着く直前の曲がり角で、人の声が聞こえたような気がして、るるの足が止まる。

角からそっと覗き込むと、政近が女生徒から告白されているところだった。



るる(また告白かなぁ。これで何回目だろう、こういう現場を見るの)



三年の美女先輩「私、聖道くんのことずっとかっこいいと思ってて、付き合ってほしいの」



その先輩は自分が綺麗だと自覚があるようで、自信に満ちて堂々としていた。



るる(あの人、三年で一番美人だって噂されている先輩だ……)



るるはクラスメイトの男子たちがデレッと鼻の下を伸ばして噂していたのを思い出す。

その時の男子たちと違って、告白されている政近の顔は無表情だった。



政近「好きな人としか付き合わないって決めてるから、無理です」



るる(あんなに綺麗で恋愛対象『内』な人でもダメなんだ……)



政近に注目していたるるは、背後から浅美仁礼(あざみにれい)に声をかけられて飛び上がるほど驚いた。



仁礼「また断ってるねぇ」

るる「ひぇっ!?」



仁礼は緩やかなくせのあるアッシュグレーの髪でパッと見チャラそうな、政近とは違うタイプのイケメン。

るるたちの存在に気づいて三年の美女先輩が去っていく。
続いて政近もるるたちの方へやってきて、若干るるに壁ドン気味に廊下の角へ手をおいた。



るる「こんな所で待たせてごめん。来てくれてありがとう小笹さん」



先ほど美人な先輩へ向けていた視線とは違う優しい眼差しを政近から向けられて、るるの心臓がドキと小さく音を立てた。





〇生徒会室



生徒会室内の大きな机で政近の隣にるる、政近の正面に仁礼が座り、各自ノートパソコンを使って作業している。



るる(文化祭の予算は……)



仁礼「あーもう、やる事が多すぎて疲れた」



そう言いながら仁礼が天井の方へ顔を向けた。

政近はパソコンの画面を見ながら仁礼に声をかける。



政近「会計の仕事なのに副会長の小笹さんが手伝ってくれているんだ。口じゃなく手を動かせ」

仁礼「厳しいな~政近は」



るる(口調は厳しいけど、生徒会長の仕事でもないのに一緒にやってくれてるし、聖道くんってさりげなく優しいと思うなぁ)



仁礼「会計の仕事が忙しいのは一学期で山川ちゃんが引越して俺ひとりになったせいじゃん」

政近「来週から募集をかけて文化祭が終わったら欠員補充すると聞いている。それまで辛抱しろ」

仁礼「文化祭までが特に忙しいんだよぉ」



るる(ん?)



黙々と入力作業をしていたるるの手が止まった。



るる「聖道くん、この項目のデータ、どのファイルに入っているかわかる?」

政近「ああ、それなら俺が作ったファイルに入ってる」

るる「これかな、あ、パスワードかかってる」

政近「副会長にだけ閲覧用のパスワード教えるから、それで開いて」



るる(ひゃ、くすぐったいっ)



顔を寄せた政近に小声で囁かれ、耳にかかる息の感覚に驚き、るるの顔が真っ赤になった。



政近「小笹さん?」

るる「へぁ!?」



心配顔をしていても眉目秀麗な政近に顔を覗き込まれ、るるの心臓がドキッと音を立てる。



政近「聞こえなかったかな。もう一度教えようか?」

るる「だ、大丈夫! 聞こえたから!」



無意識に政近側の自分の耳元へ手を寄せながら、るるはパソコン画面に向かう。



るる(えーっと、01(ゼロイチ)……)



入力しながら、るるは、あれ?、と何かに気づいたような表情になった。



るる(聖道くんが教えてくれた暗証番号の『0105(ゼロイチゼロゴ)』って、私の誕生日と一緒だ!)



るるの頭上に、『0105』と『1月5日』が並んで表示されている。




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