激モテ生徒会長の暗証番号は子猿な私の誕生日と一緒~こんな偶然ってあるだなぁ、と思っていたらなんだか溺愛されてるような?~
第4話 初デート!?
〇駅前(土曜日)
駅前にあるモニュメントのそばで、るるはスマホを手にキョロキョロしている。
るるはジーンズにカジュアルなパーカー姿。
るる(聖道くんも浅美くんも、まだ着いてないのかな)
政近はすでに着いていたが、スカウトや目をハートにした女性たちに囲まれていたため、るるからは見えない。
るるの存在に気づいた政近が、人をかき分けるるに声をかける。
政近「小笹さん」
キャップを被りモノトーンの装いで派手なわけではないのに、政近は華やかなオーラがあり輝いて見えた。
るる「あ、聖道くん。ごめんね、時間ギリギリになっちゃって」
政近「大丈夫だよ。浅美もまだ来てないし」
政近はるるの髪がはねていて寝ぐせがあることに気づく。
手を伸ばした政近がるるの髪を優しく撫でたため、その距離の近さに、るるの胸がドキッと音を立てた。
政近「急いで来てくれたんだね。髪がはねてる」
るる「あ、寝ぐせ! これはその、年の離れた弟たちが朝バタバタしてて、直す時間がなくなっちゃって」
おねしょをした幼稚園児の弟と、牛乳をこぼした小学校低学年の弟と、その世話をしているるるの絵。
るる(恥ずかし~寝ぐせとかこういうところが『恋愛対象外』なんだろうなぁ)
るるは顔を真っ赤にして恥ずかしがっている。
政近(可愛い……)
恥ずかしがっているるるを見て政近から小さなハートが飛んでいるが、自分へ向けられている好意にるるは気づいていない。
るるが手にしていたスマホが震え、メッセージが届いたことを知らせた。
政近はるるから手を離し、るるはスマホを確認する。
るる「あ、浅美くんからだ」
るるがスマホを確認すると、仁礼からのメッセージが表示されている。
『文化祭の買い物は俺の方でなんとかするよ』
『ふたりでデートしておいで』
政近「浅美からは、今日の件で?」
政近に聞かれたるるが、スマホ画面を見せる。
るる(え、どうしよう。デートなんて何したらいいのか分からない)
不安で動揺したるるは、つい呟いてしまった。
るる「浅美くんにも来てほしかったな……」
政近(浅美に来てほしかった……)
るるは俯いていて気づいていないが、政近の心の中は周囲を凍らせそうなほどの猛吹雪になっていた。
政近(小笹さんはやはり、浅美のことが好きなんだろうか)
複雑そうな表情をしながら、政近がるるに提案する。
政近「俺たちが付き合ってると思われれば浅美のためにもなるし、今日はこのまま一緒に出かけないか?」
るる(聖道くんは浅美くんのために自分との噂を消してあげたいんだ……)
るる「そうだね。高校も近いから知り合いに会うかもしれないし、今日はこのままデートしよう」
政近「デート……になるのか」
ふい、とるるへ背を向けた政近の顔は赤い。
表情が見えないため背を向けた政近が、るるには素っ気なく感じた。
るる(デート、なんて言って嫌だったかな。そうだよね……、本当は聖道くん、浅美くんと出かけたかったんだもん)
政近「小笹さん、どこか行きたい所ある?」
顔が見られないように政近は自分のキャップをポスリとるるに被せながらたずねた。
るる(聖道くんにも楽しんでもらえそうな場所がいいな……)
思案顔だったるるが、あ、と閃いた表情になった。
るる「文化祭の買い物をしてくれる浅美くんへお礼を買うのはどうかな? 誕生日プレゼントも兼ねて、一緒に選びに行かない?」
政近「誕生日?」
るる「うん、九月九日だよね、浅美くんの誕生日」
るる(救急の日だよ~って、よくアピールしてたから覚えてる)
政近「浅美の……、まぁ、いいけど」
るる(あれ、聖道くん不機嫌? あ、もしかしてプレゼントはもう用意してたりしたのかな)
〇ショッピングモール内
様々な店が並んでいる。
るると政近のふたりで案内図を見ていると、政近はすぐに女性たちから話しかけれて、断ってもすぐにまた話しかけられてしまう。
小柄なるるは、女性たちの視界に入っていない。
るる(聖道くん断るのも大変そう。早く買う物を決めて移動した方がいいかも)
るる「浅美くんは甘い物が好きだよね。美味しいチョコレートとかどうかな。専門店があるみたい」
第一話の生徒会室でチョコを食べていた仁礼の姿を思い出しながら、るるが提案する。
○チョコレート専門店
種類が多すぎて、るるは悩んでいる。
るる「浅美くんはやっぱり甘めのチョコの方がいいのかなぁ。卵焼きも甘いのが好きって言ってたから」
政近「小笹さんの好みで選んでいいと思うよ」
るる「私はチョコあんまり食べないんだ~、チョコよりもおせんべいとかみたらし団子とかが好き」
政近は心の中で、るるが嬉しそうにおせんべいやみたらし団子を食べている姿を想像している。
るる「聖道くんなら、どのチョコを選ぶ?」
政近「少し苦めのかな、甘いのは苦手だから」
るる「聖道くんは甘いの苦手なんだ、知らなかった」
政近の脳内に、『浅美くんは甘い物が好きだよね』←好みを知ってる、『聖道くんは甘いの苦手なんだ、知らなかった』←好みを知らない、と言っているるるの姿が浮かぶ。
政近「小笹さんは……俺の誕生日知ってる?」
るる「聖道くんの誕生日……確か、GWあたりだよね」
るる(そのころ生徒会室にまでプレゼントの山ができていたのを覚えている)
政近「……五月一日」
『九月九日だよね、浅美くんの誕生日』断定、『聖道くんの誕生日……確か、GWあたりだよね』推定、と脳内に浮かぶるるの姿にショックを受けながら政近が呟いた。
るる「あ、そっか」
腑に落ちたような顔になったるる。
るる(聖道くんの暗証番号は、自分の誕生日の月と日を逆にしたものだったんだ)
〇ショッピングモール内
両側に店が並ぶショッピングモール内の広い通路を並んで歩くるると政近。
るる「浅美くんの好きそうなチョコが買えてよかったね」
るるは手にチョコレートショップの小さな紙袋をぶら下げている。
ふ、とアクセサリーショップの店頭に並ぶ、青い花びらの小さな花がついたヘアピンに目を奪われた。
るる(あ、可愛い)
るるの様子に気づいた政近が、るるの視線の先へ目を向ける。
政近「ミスミソウみたいだな」
るる「ミスミソウ?」
初めて聞く単語に、るるはキョトン顔。
政近「実際のミスミソウには様々な色や形があるけど、俺がすぐ思い浮かぶのは、あのヘアピンの青い花」
るる「へぇ、ミスミソウって初めて聞いた。聖道くん、よく知ってるね」
政近とるるはそのお店に近づいていく。
るる(わー、やっぱり可愛いなぁ)
可憐なヘアピンを、るるは目を輝かせながら眺めている。
政近「買う?」
政近の提案に、るるは首を横に振った。
るる「私には似合わないから」
政近「そんなことない。この花は小笹さんによく似合うと思う」
るる「私、中学生の時に男子から『子猿は恋愛対象外』って笑われるような見た目なの。そんな私がこんなに可愛いのをつけてたら笑われちゃうよ」
政近「そっか……」
過去を思い出して俯いたるるは、政近の「値札は外してください」の声が聞こえて顔を上げた。
るる「ぇ、聖道くん?」
ヘアピンを手にした政近は、るるの手をつなぎ店を出て行く。
そしてるるの頭に、ヘアピンをつけた
政近「うん、思った通り可愛い、よく似合ってる」
政近に甘く微笑まれ頬を染めたるるだったが、すぐにハッと気づく。
るるはバッグの中から財布を取り出した。
るる「ごめん聖道くん、いくらだったかな」
政近「プレゼントさせて。初デートの記念に」
そんなふたりの様子を、少し離れた所から同じ高校の生徒が見ていた。
その生徒は、第一話で政近に告白していた三年の美人な先輩とその友人の三人。
三人はこそこそ話している。
モブ三年先輩1「ねぇあれ、二年の聖道くんと副会長の子猿ちゃんじゃない?」
モブ三年先輩2「付き合ってるっていうの、本当だったんだ」
三年の美女先輩(子猿のくせに……)
三年の美人な先輩はるるのことを睨んでいた。