激モテ生徒会長の暗証番号は子猿な私の誕生日と一緒~こんな偶然ってあるだなぁ、と思っていたらなんだか溺愛されてるような?~
第5話 コンプレックスを作った初恋相手から着信!?



〇高校の昇降口(登校時間帯)



週明け月曜日に登校してきたるるは、政近からプレゼントされた青い花のヘアピンを髪につけている。



るる(あれ?)



手を伸ばそうとしていた下駄箱を見て、不思議顔のるる。



るる(うわばきが、ない……)



るるが立ち尽くしているところに、ゆるふわポニーテールで華やかなリコが登校してきた。



リコ「おっはよー。ん、どした?」

るる「おはよ。うわばき忘れちゃったからスリッパ借りてくるね」

リコ「ん、わかったー」



るるが去っていく後ろ姿。

そのタイミングで黒髪ストレートヘアの容姿端麗なかやのが登校してきた。

るるが去って行った方を見てクスクス笑っている三年美女先輩とその友人の姿も、かやのの視界に入っている。



かやの「今の、こざじゃなかった?」

リコ「うわばき忘れたんだって、スリッパ借りにいった」

かやの「先週は二日しか登校日がないから、持ってかえってないと思うけど……」





○教室(昼休み)



教室内廊下側の席で座っている、るるとリコとかやの。



リコ「このまえは突然生徒会長たちが来てびっくりしたよ」

かやの「つきあってるって話だけど、本当なの?」

るる「う、うん」



るる(『偽装』だけど)



るる「それでね、今日も聖道くんと一緒にお昼食べる約束してて。行ってきてもいいかな」

リコ「もちろん」

かやの「でも大丈夫なの。ほら、聖道くんって女子に冷たいじゃない?」

リコ「そうだね~、その点は心配だな~。こざ、冷たくされても我慢しちゃいそう」

るる「それは……、大丈夫だと思う」



そこへ廊下側の窓から教室に顔を出した仁礼が会話に入ってきた。

キャァ、と女子たちの歓声が上がる。



仁礼「何が大丈夫なの? って、るんるんヘアピン可愛いね、いつもシンプルなのしかつけてなかったのに。買ったの?」

るる「あ、もらった、の」



るるは政近につけてもらった時のことを思い出して頬を染めている。

そんなるるを見た仁礼は、その初々しさに胸がきゅんとときめいた。



仁礼「あー、もしかして政近にもらったとか」



顔を赤くして頷くるるを見て、仁礼の胸が今度はズキッと小さく痛む。

そのことに一瞬、違和感を覚えた仁礼だったが、すぐに明るい笑顔を見せた。



仁礼「うまくいってるみたいでよかったねー。あ、そうそう朝、政近からチョコも受け取ったよ、ありがとねー」

かやの「聖道くんは今日一緒じゃないの? ふたり同じクラスでしょう?」

リコ「こざ、生徒会長とお昼食べるって聞いたよ~」

仁礼「そのことなんだけど、政近さぁ、欠員選挙の関係で先生に呼び出されちゃって、来れなくなっちゃったんだよねぇ」

るる「そうなんだ……聖道くん大変だね、大丈夫かな。浅美くんも、わざわざ教えに来てくれてありがとう」

仁礼「それでね、これ」



仁礼がお弁当の入った袋を差し出した。

るるが両手でそれを受け取る。



仁礼「手作り弁当、政近から」

リコ「ええっ」

かやの「手作りって、まさか聖道くんが?」



リコとかやのだけじゃなく、周囲も騒然としている。



リコ「こざのお弁当を生徒会長が作ったってこと?」

るる「えっと……今日から順番に作るって約束してて、最初は聖道くんの番だったから」

仁礼「開けてみてよ。何やらせても完璧な政近の作る弁当がどんなに凄いのか見てみたい」

るる「ちょ、ちょっと待ってね」



カパ、とるるがお弁当のふたを開ける。



かやの「思ったより普通ね」

リコ「しかも卵焼き、ちょっと焦げてるし」

仁礼「あー、そういえば調理実習の時とか、女子が政近の代わりに全部やっちゃうからなぁ。もしかしたら今まで、料理したことないのかも」

かやの「そんな聖道くんが、こざのために料理したんだ」

リコ「冷たいかと思って心配したけど、こざ愛されてるじゃん」



かやのとリコは安心したように笑みを見せた。

三人とも昼食を食べ始めて、るるは政近の作った卵焼きを口にした。



るる(ちょっとしょっぱい)



苦戦しながら卵焼きを作っている政近の姿が、るるの頭に浮かぶ。



るる(料理苦手なのに、がんぱって作ったのかな)



卵焼きを食べながら、るるは嬉しそうに微笑んだ。





○一年生の階の廊下(昼休み)



ワンコ系な見た目の一年男子、珠洲撫筒路(すずなでつつじ)が掲示板を見ている。



一年モブ男子「珠洲撫(すずなで)、なに見てんの」

筒路「生徒会会計の募集」

一年モブ男子「生徒会? 俺らには関係ないだろ、うちの高校って生徒会役員は二年じゃん」

筒路「今回はイレギュラーの募集だから、一年の立候補でもいいみたいなんだよね」

一年モブ男子「え、もしかして立候補すんの? 一年じゃ無理っしょ」

筒路「立候補するよ。こざ先輩に近づきたいから」





○教室と廊下(放課後)



教室内で文化祭の小道具作りが始まっている。

るるのクラスは団子屋さん。



るる「クラスの方、抜けてごめんね。生徒会室に行ってくる」

リコ「いってら~」



リコとかやのがるるに手を振っている。





○廊下(放課後)



スリッパでパタパタ廊下を歩くるるに政近が声をかけた。



政近「小笹さん」

るる「あ、聖道くん。これから生徒会室へ行くところだったの。聖道くんは?」

政近「俺もだ。一緒に行こう」



チラ、と政近はるるのスリッパを見る。

でも何も言わずに並んで歩き始めた。



るる「お昼はお弁当ありがとう」

政近「お弁当を作るのは大変だって初めて知ったよ。小笹さんは上手に作れてすごいね」

るる「このレシピサイトだと、簡単で美味しいお弁当の作り方がたくさん載ってるよ」



るるがポケットからスマホを取り出して政近に見せたタイミングで、着信が入った。

画面に『矢能テツ』の文字が表示されている。

るるの顔色が青くなったことに政近が気づく。



政近「小笹さ……」

筒路「こざ先輩!」



声をかけられて、るるが顔を上げると少し離れたところに筒路が立っていた。



るる「筒路くん……」



政近はどこか不安そうな表情で、るるを見ている。




< 5 / 5 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

表紙を見る
表紙を見る
表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop