高貴な財閥夫婦の秘密
階段下には、梨良をお姫様抱っこした知嗣が待っていた。

「トモ!!」
「梨良、大丈夫!?」

「かなり悪いみたい。
那留、悪いけど……」

「あぁ!車、回してくる」
那留が、出ていく。

「いや…行きた、く…ない…」
意識が朦朧としながらも、訴えるように言う梨良。 
梨良はイヤイヤと言う風に、更に知嗣にしがみつく。

「梨良!!ダメだよ!」
「梨良!!」

「那留く…美、奈…さ…に迷惑……」

「梨良!そんなこと言ってる場合じゃないよ!」
美奈も、言い聞かせるように言う。

「それに…知く…離れ、た…ない…」
そう言って、知嗣に訴えるように言う。

「梨良…」

そして那留が車を回し、戻ってきた。
那留が梨良を受け取ろうとするが、梨良はイヤイヤと知嗣にしがみつく。
それを無理矢理引き取り、外に出て車の後部座席に乗せた。

「知嗣さん、私達も行きましょ!」
それを切なく見つめる知嗣に、美奈が力強く言った。
知嗣と美奈も、知嗣の車で後を追った。

救急病院に着き、那留が抱きかかえて連れて行く。
知嗣と美奈は、待合室で待っていた。

しばらくして、那留が戻ってくる。

「那留!」
「梨良、どうだった!?」

「もう少しで、肺炎になってたらしい。
今、点滴してる。
できれば、このまま病院で様子見た方が良いっつってるけど、家の方が梨良が良いんじゃねぇかって思ったから点滴終わったら連れて帰る」

「わかった。
那留、ごめん…」

「何が?」

「美奈も、ごめんね」

「…………
とりあえず、梨良の点滴が終わったら家に帰りましょ?」

点滴が終わり、屋敷に帰った四人。
梨良をベッドに寝かせて、知嗣がベッド脇に腰掛け梨良の頭を撫でた。

「知嗣さん、私達戻るね」

「あ、うん。ありがとう!」

「明日朝、お粥作ってくるから」

「え?
大丈夫だよ、僕が……」 

「良いから。
知嗣さんは、梨良の傍を離れないであげて?」

そして那留と美奈が、二階に戻っていった。

< 13 / 55 >

この作品をシェア

pagetop