高貴な財閥夫婦の秘密

次の日の朝。

那留と美奈がお粥と、知嗣に朝食を作ってきた。

「トモ、おはよ！」　　
「梨良どう？」

「あ、おはよう。
熱も下がって、落ち着いてる。
点滴、効いたみたい」

「「良かった…！」」
那留と美奈が、安心したように微笑んだ。

すると、梨良が目を覚ました。

「ん…」

「梨良！！」

「梨良、大丈夫か！？」
「梨良、わかる！？」

「あ…みん…な…」

「大丈夫！？」

「うん…楽になったよ…」

弱々しいが微笑んだ梨良に、知嗣達はホッと肩を撫で下ろした。

「那留くん、美奈さん、ごめんなさい。
せっかくの初夜だったのに……」
申し訳なさそうに肩を竦める梨良。

那留と美奈は顔を見合わせ、知嗣と梨良を見据えた。

「トモ、梨良」

「「ん？」」

「もう、謝るのやめない？」

「「え？」」

「トモも、梨良も、何一つ悪くないだろ？」

「でも……」

「“それも覚悟した上で”私達は、秘密を共有してるんだよ？」

「美奈…」
「美奈さん…」

「トモが言ってた“もしかしたら、逆に辛くて苦しい思いをすることになるかもしれない”ってやつ。
それは“こうゆうことなんだろ？”」

「それは……うん、そうだよ」

「あくまでも、梨良の旦那様は那留。
私の旦那さんは知嗣さん」

「だから梨良に何かあったら、夫である俺が全部対応しないとならねぇ」

「それが、どんなに辛いことでも。
私は、那留の一番にはなれない」

「俺達は“その覚悟をして”こうなることを受け入れた」

「だから、謝るのは違う！
どんなに辛くても、梨良の旦那様は那留。
梨良が知嗣さんの一番になれるのは、この屋敷の中でだけ」

「美奈さん…
うん！そうだよね！」

「知嗣さんも、もう謝るのなしね！」

「わかった！」

「…………よし！！
じゃあ、またなんかあったら連絡しろよ！」

「うん、ありがとう！」
「那留くん、ありがとう！」

四人は再度、覚悟を確かめ合うように頷き合った。