高貴な財閥夫婦の秘密

秘密の生活と思い知らされる現実

【平日】

切ない初夜から、一ヶ月経った―――――――

だいぶ、四人は秘密の生活に慣れてきていた。


朝。
アラームの音が鳴り、梨良が目を覚ます。
起きて、アラームを止めた。

少しボーッとして、隣で眠る知嗣の頭を撫でた。

そして……今日も、朝起きて知嗣の傍にいれる喜びを噛みしめる。

「フフ…！」　

「どうして笑うの？」
目を瞑っていた知嗣が声をかけてきた。

「へ！？」

パチッと目を覚ました、知嗣。
そして梨良を見上げて、鋭い視線で見つめた。

「寝顔、変だった？」

「え？」

「頭、梨良が撫でてくれたのが心地よくて、それに浸ってたら今度は笑い出すんだもん！
せっかく、良い気分だったのに」

「あ…//////
幸せだなって、噛みしめてたの」

「なんだ！
そうゆうことか！」
ホッとしたように息を吐いて、起き上がった知嗣。
梨良を抱き締めた。

「知くん？」

「ダメだな……
梨良のこととなると、一喜一憂してしまう…
梨良のこと、すっごく好きだから」

「私も、知くんが大好き！！」

向き直って笑うと、知嗣も微笑んだ。
「ねぇ、キスしよ？
今日も、お互い頑張れるように！」

「うん！」

知嗣が梨良の頬を包み込んで口唇をなぞると、梨良が嬉しそうに目を瞑った。

ゆっくり知嗣の顔が近づき、口唇が重なった。

一緒に寝室を出て、洗面をしリビングへ。
梨良が朝食の準備をしている間、知嗣はソファに座りスマホでネットニュースや、新聞のアプリを見ていた。

「………これ…」

あるネットニュースを見て、ため息が出た。　

そのネットニュースには“那留と梨良のツーショットの写真が”載っていた。

“新婚・隠岐原夫婦のショッピング姿をキャッチ！
奥様を、優しくエスコート。
絵になる、美しき夫婦”

できる限り知嗣と梨良、那留と美奈はそれぞれ一緒にいれるように、四人で行動するようにしている。
なので大抵四人で買い物に出掛けるので、もちろんこの時もすぐ近くに知嗣と美奈もいた。

しかしこの写真を見ると、那留と梨良のデートのようにしか見えない。

確かに那留と梨良は、有名で高貴な財閥夫婦。
しかし、こんな風に晒される立場ではない。

「ほんっと…呆れる…」

「ん？何が呆れるの？」

気づくと、梨良が隣に座り顔を覗き込んでいた。

「あ…ううん！」

こんな記事を、梨良には見せたくない。

梨良にも、絶対に“エゴサーチや四人絡みのネットニュースを見ない”ように伝えている。
知嗣は何を書かれてても気にならないが、梨良はすぐに思い詰めてしまう。

知嗣はスマホ画面を切って、梨良に微笑んだ。

「……？？
朝食、出来たよ！」

「うん！」
微笑み頷き、カウンターに向かう。
知嗣と梨良は、並んで座りアイランドキッチンのカウンターで食事をしている。

特注で作った、カップルチェアに座り仲良く食べ始めた。