高貴な財閥夫婦の秘密
【梨良、今起きたぞ。
ぐったりしてフラフラしてるから、できる限り早く帰ってこいよ】

那留からのメッセージを見て【わかった。あと、一時間くらいで帰るよ】と返信した知嗣。

再度那留から“了解”のスタンプが送られてきた。

(やっと起きたんだ…!
早く会いたいな……!)
そんなことを考えながら思わず笑みがこぼれた、知嗣。

「………どうしました?」
美奈の友人に言われる。

「あ…いえ。
友人から、嬉しい連絡があったので。
すみません、つい…」

「へぇ~
でも、ほんとびっくり!」

「え?」

「知嗣さんって、美奈が選びそうにないタイプだから」

「そう…かな?」

「うん。
ほら、元彼の……那留さん!」

「あ…うん…」

「お似合いだったじゃん!」

「うん…」

「今時“政略結婚”とかあるんだね(笑)」
「美奈、あんな好きだったのにね……辛いよね……」

「……………でも、わかってて付き合ったから」

「でも、どうなんだろう……
好きでもない人との結婚って」

「え?」

「あ、ほら!
那留さんは、好きでもないお嬢様と結婚したんでしょ?
那留さん、どんな気持ちなのかな?って」

「…………辛いですよ」

「え……」
「知嗣…さん?」

「辛いに決まってるじゃないですか。
那留からすれば、残酷でただ辛いだけ。
“本当なら俺自身が美奈に触れて、抱き締めて、キスをして、誰の目にも触れさせずに腕の中に閉じ込めたい”」

「………」
「………」
「………」

「………って、思ってるはずです」

知嗣は淡々と…でも、苦しそうに言い放った。

「え……
美奈と知嗣さんって、那留さんに振られた美奈を知嗣さんが慰めてくれたから、二人の間に愛情が芽生えたんだよね?」

「なんか……美奈と知嗣さんも“結婚させられた”みたいな言い方………」

「そうですよ。
これは“あくまでも”那留のことです」

「で、ですよね…(笑)」

できる限り、疑いを持たれないようにしないといけない。
知嗣は冷静に言った。

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