高貴な財閥夫婦の秘密
一泊二日の魔法
「――――美奈。さっきから何調べてんの?
俺の相手しろ!!」

ある日の夕食後。
美奈がノートパソコンで、何やら調べものをしていた。

那留が横から覗き込む。

「……??
ん?グランピング?」

「うん。
来月の連休、四人でどうかなって!」

「うーん…
でもよ。トモと、屋敷に籠もろうなって話してるんだが!」

「あ、もちろん、外をウロウロしようだなんて言うつもりないわよ?
“あくまでも四人のみで過ごせること”が絶対条件よ!」

「は?
そんな都合の良い所あんの?」

「うん、今日ね。
社員の子達が言ってたの。
一日限定10組で、一つ一つの宿泊部屋が完全に離れてるらしいの!
しかもその子達が突然行けなくなったとかで、キャンセルがどうのって言ってたから譲ってくれるかもなのよ!
プライベート空間を維持出来るって……あ!これ!
…………どうかな?」

パソコン画面を見せる。
那留は「へぇ~」と感心したように言って、知嗣に電話をかけた。

「あ、トモ?
ちょっと今から下行ってい?」

那留と美奈は、一階に降りた。


リビングのドアをノックすると「はーい!どうぞ~」と梨良の声が聞こえてきた。

中に入ると、梨良が「どうぞ!」とソファに促した。

紅茶を出した梨良が、知嗣の隣に座りくっついて腕にしがみついた。
それを見て、那留と美奈が笑う。

「ん?何?」

「そんなことしなくても、俺達はトモ取ったりしねぇよ?(笑)」

「え?」

「トモをさらいに来たんじゃねぇってこと!(笑)」

「わかってるよ!」

少し怒ったように言う梨良の頭を優しく撫で、知嗣が「それで?どうしたの?」と言った。

「あ、これ見てくれる?」
美奈がノートパソコンを出し、二人に画面を見せた。

「ん?グランピング…だよね?これ」
「わぁ〜綺麗な景色!」

「ここね。
一日10組のみの完全プライベート空間が売りの、グランピング施設なの!
一つ一つの宿泊部屋が全部、離れてる。
もちろん四人での宿泊だけど、基本的にはカップルでいれると思う。
来月の連休、行かない?」

「へぇ~、素敵……!」
梨良が目をキラキラさせている。

「でも一日10組限定なら、今から予約出来ないんじゃない?
しかも、連休でしょ?
とっくに満室じゃないかな?」
その横で冷静に言う知嗣に、社員達四人がキャンセルすることを伝える。

すると知嗣が「梨良が行きたいなら良いよ」と言った。

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