高貴な財閥夫婦の秘密
「あ…ううん…!
寝れなくて…」

「そっか」

「それよりも、梨良全然起きないね(笑)」
あれだけスキンシップされたら、目を覚ましてしまいそうだ。
美奈は、クスクス笑い言う。

知嗣も笑って「ぐっすり眠ってるからね(笑)」と言った。
「梨良って、一度寝るとなかなか起きないんだ。
だから、悪戯し放題だよ(笑)」と続けて言った。

「じゃあ、いつもしてるの?」

「うん、まぁね(笑)
梨良に触れてると、安心するからね。
温かくて、柔らかくて癒される……!
それに、とにかく可愛くて愛おしいから……!」

「フフ…そっか!
じゃあ、もう邪魔しちゃ悪いね(笑)
寝るね!おやすみなさい…!」

「フフ…おやすみ……!」

美奈は那留の腕の中にもぐり込み、ゆっくり目を瞑った。


夜が明けて、朝食は四人で食べ………

「―――――よし!忘れもん、ねぇよな?」
那留が三人に言った。

「えぇ!」
「うん、大丈夫!」
美奈と知嗣が頷く。

梨良は知嗣にべったり抱きついていて「あ…忘れ物あるかも?」と言った。

「じゃあ、早く確認しろ梨良。
もうすぐ、チェックアウトだからよ!」

「うん…」
頷いて、知嗣に「知くんも来て」と言った。

部屋に戻ると、梨良が両手を広げた。
「ん?梨良?」

「ギリギリまでギュッてしよ?」

「梨良」

「ね?しよ?」

「もう、ギリギリだよ?」

「やだ!
ギュッてするの!」

「梨良」

「やだ!!
ギュッてして!」

「………」

子どもじみたワガママなのは、十分わかっている。

しかしここを出たら、魔法が解けたように現実に引き戻され、また幸せと苦痛の入り混じった生活が始まる。

「知くんも、私をギュッてしたいよね?」

「したいよ?
でも、もう行かなきゃでしょ?
家に帰ってから、またギュッて沢山しようよ?」

「今!!今がいい!!」
駄々をこねるように両足をバタバタする、梨良。
目も潤んで、涙が溢れてきた。

「梨良」

「…………帰りたくない…」

「梨良…」

「ここにいたい…
知くんと二人っきりで…」

「………」

「ここなら……誰にも気づかれない。
知くんとお外お散歩しても、ギュッてしてても、キスしても誰も見てない。
……………ね?二人でここにいよ?
追加料金払い続けてれば、ずっとここにいられるよ?」

知嗣は、ゆっくり梨良に近づいた。

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