高貴な財閥夫婦の秘密
梨良を、抱き締めた。
梨良もしがみつくように、知嗣の背中に手を回す。
「……………ごめんね」
「え?知くん?」
「ごめん。
僕にもっと力があったら、梨良にこんな辛いことを言わせずに済んだ。
梨良を“ちゃんと普通の僕の奥さん”に出来た。
ごめんね…ごめん……」
「あ…違っ…そんなつもりで言ったんじゃ……
私こそ、ごめんなさい…」
その話を、ドア越しに聞いていた那留と美奈。
那留は辛そうにギュッと目を強く瞑り、大きく息を吐いてドアを開けた。
「こら!!
マジで、チェックアウトやべぇんだよ!!
急げ!!」
知嗣と梨良に、声を荒らげた。
チェックアウトを済ませ、自宅に帰る。
「―――――美奈さん、ありがとう!」
梨良が微笑み、隣に座る美奈に言った。
「え?」
「美奈さんのおかげで、知くんと一時の魔法にかかれた!
美奈さんのおかげ!ありがとう!」
「でも、逆に辛い思いをさせたよね……」
「ううん!
違うよ!
確かに今、とっても辛いけど……
でも、昨日は本当に幸せだったの!
諦めてたことが出来たんだもん!
知くんと手を繋いでお散歩して、周りも気にせずに過ごす。
普通のことだけど、その普通のことがずっと出来なかったでしょ?
美奈さんのおかげで、それが出来た!
ありがとう!」
「うん…それなら良かった…!」
「美奈さん」
「ん?」
「泣かないで?」
「え?え?
私?泣いてないよ?」
「美奈さん、悲しそうだから……」
「あ…今回の旅行、私が那留と旅行に行きたかったから、知嗣さんと梨良を巻き込んだみたいなものだし…
梨良に逆に辛い思いをさせたかなって。
だから今、お礼言ってもらえてホッとしてるの」
「うん!
私は大丈夫だよ!」
「え?」
「知くんにワガママ沢山言っちゃうけど、大丈夫なの!
知くんの傍にいられたら、それだけで十分。
強がってない。
本当に、傍にいられたらそれだけで十分。
それ以上は、望まない……!」
「それ以上……
梨良、それって………」
「ん?」
「ううん…」
微笑んでいる梨良を見つめながら、美奈はあることを考えていた。
(梨良は“欲しい”と思わないのかな?
自分と知嗣さんの………)
梨良もしがみつくように、知嗣の背中に手を回す。
「……………ごめんね」
「え?知くん?」
「ごめん。
僕にもっと力があったら、梨良にこんな辛いことを言わせずに済んだ。
梨良を“ちゃんと普通の僕の奥さん”に出来た。
ごめんね…ごめん……」
「あ…違っ…そんなつもりで言ったんじゃ……
私こそ、ごめんなさい…」
その話を、ドア越しに聞いていた那留と美奈。
那留は辛そうにギュッと目を強く瞑り、大きく息を吐いてドアを開けた。
「こら!!
マジで、チェックアウトやべぇんだよ!!
急げ!!」
知嗣と梨良に、声を荒らげた。
チェックアウトを済ませ、自宅に帰る。
「―――――美奈さん、ありがとう!」
梨良が微笑み、隣に座る美奈に言った。
「え?」
「美奈さんのおかげで、知くんと一時の魔法にかかれた!
美奈さんのおかげ!ありがとう!」
「でも、逆に辛い思いをさせたよね……」
「ううん!
違うよ!
確かに今、とっても辛いけど……
でも、昨日は本当に幸せだったの!
諦めてたことが出来たんだもん!
知くんと手を繋いでお散歩して、周りも気にせずに過ごす。
普通のことだけど、その普通のことがずっと出来なかったでしょ?
美奈さんのおかげで、それが出来た!
ありがとう!」
「うん…それなら良かった…!」
「美奈さん」
「ん?」
「泣かないで?」
「え?え?
私?泣いてないよ?」
「美奈さん、悲しそうだから……」
「あ…今回の旅行、私が那留と旅行に行きたかったから、知嗣さんと梨良を巻き込んだみたいなものだし…
梨良に逆に辛い思いをさせたかなって。
だから今、お礼言ってもらえてホッとしてるの」
「うん!
私は大丈夫だよ!」
「え?」
「知くんにワガママ沢山言っちゃうけど、大丈夫なの!
知くんの傍にいられたら、それだけで十分。
強がってない。
本当に、傍にいられたらそれだけで十分。
それ以上は、望まない……!」
「それ以上……
梨良、それって………」
「ん?」
「ううん…」
微笑んでいる梨良を見つめながら、美奈はあることを考えていた。
(梨良は“欲しい”と思わないのかな?
自分と知嗣さんの………)