高貴な財閥夫婦の秘密
「ごめんね、遅くに」

「…………ん。
“梨良とのこと”だよな?」

「うん」

「………」

「美奈に話したの?」

「あぁ」

「美奈、何て?」

「ただ…“わかった”って。
元々その話は美奈にしてたし、そのつもりで付き合ってたからな。
……………でも…泣いてた」

「だろうね…」

「トモだって“そのつもり”だったんだろ?」 

「それは……」

「…………情けねぇが、俺にはどうすることも出来ねぇ…
ほんと、情けねぇよ……」

「那留はそれで良いの?」

「それで良いとか、悪いとかじゃねぇ。
お前だってわかってるよな?
梨良の親父の恐ろしさ。
あのおっさんは“人間じゃねぇ”
梨良を自分の所有物だと思ってる。
俺と結婚させて、隠岐原を吸収したいんだ、きっと」

「そのためだけに……
………………梨良があまりにも可哀想だよ……」  
 
「一度結婚して、俺が悪いことにして離婚しようとも考えた。
でも……」

「きっと、そんなことも許さないだろうね…」

「そうだな……
“ある意味”国を動かせるくせに、常に世間体を気にしてるもんな、あのおっさん」

「そうだね。
それに例え那留との結婚がなくても、一般家庭の僕には嫁がせないだろうね……(笑)」

「………だろうな…(笑)
……………でも…おばさんが生きてたら……きっと、こんなことにはならなかったんだろうな……」

「おそらく…」

「俺はさ……良いんだ。
美奈と一緒にいれるなら……全てを捨てる覚悟がある。
トモだってそうだろ?」

「うん。
梨良のためなら、全て捨てても構わない」

「でも……」

「「それだけでは済まない……!」」
綺麗に、知嗣と那留の声がハモる。

「美奈と梨良を不幸にすることになる」

「そうだね…」

「それだけは、耐えられないだろ?」

「うん。
…………だからね。
考えがあるんだ……!」

「え?」

「でも……もしかしたら、逆に辛くて苦しい思いをすることになるかもしれない。
…………それでも、聞いてくれる?」

「…………聞かせてくれ…」

知嗣は、考えを那留に伝える。


「――――――――――
――――――…………わかった」

「“那留に覚悟があるなら”梨良と美奈に話そうと思う」

「あぁ、頼む……!」


そして後日………

知嗣、那留は、梨良と美奈を入れて四人で話し合いを設けた。

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