高貴な財閥夫婦の秘密
漸くスマホを取った、知嗣。

「ん?那留だ」

そう呟いて、電話に出た。
「もしもし?
………ん?あー(笑)
梨良、僕といる時はスマホの音切るもんね…(笑)
………うん、うん、病院は?
………ん。そうなんだ。わかった」

「ん?どうしたの?」
通話を切った知嗣に声をかける。

「美奈が、風邪引いたんだって!
それで、お粥作ってくれって!」

「そうなの!?
わかった!急いで作るね!」

慌ててキッチンに向かう、梨良。
早速取りかかる。

しばらくして、那留が降りてきた。
ノックをして、リビングに入ってくる。

「梨良、粥どう?」

「あ、ちょうど良かった!
出来たよ!」

「おっ、サンキュ!
…………つか…旨そうだな……(笑)」
トレイに置かれた、粥とスープを見て那留が言う。

「そうかな?ありがとう!」

「え?でもこれ、雑炊?」

「ううん!
野菜粥。
ご飯だけじゃ、栄養取れないでしょ?
これでも薄味だし、胃に負担がない様にしてるから大丈夫だよ!」

「そうだよな(笑)
じゃあ、持ってくから。ありがとな!」

「あ、あとなんかない?
病院は?」

「ちょっと寝て、タクシーで行くっつってる」

「そっか!
あ、私ついて行こうか?」

「「それはダメ!」」
そこまで言うと、知嗣と那留が声を揃えて言った。

「え?え?」

「もし、移ったら大変でしょ!ダメだよ!」
「そうそう!
梨良に移ったら、お前の場合すぐ肺炎起こすだろ?」

「そ、そうだね…」

「その気持ちだけで十分だから!な?梨良」

「わかった」


知嗣と那留が仕事に行き、梨良は美奈の様子を窺うために二階に上がった。

那留と美奈の寝室に向かう。
ノックし、ゆっくりドアを開けた。

「美奈さん」
美奈は横になっていた。

「あ…梨良…
お粥、ありがとう。
すっごく美味しかった……!」

「良かった!大丈夫?
他に何か、してほしいことない?」

「ん…大丈夫。
移したら大変だから、部屋出て…」

「うん、長居はしないよ?
でも、心配で……」

「ありがとう。
本当に大丈夫。
もう少ししたら病院に行くし、今は一人にして?」

「あ…そう…だよね……
ごめんね。
なんかあったら、いつでも連絡して?
お大事に……」

梨良は切なく瞳を揺らし、静かに出ていった。

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