高貴な財閥夫婦の秘密
崩壊と永遠の罪と罰、そして…覚悟
次の日の13時5分前。

美奈が駅前で待っていると、ゆっくり高級車が止まった。
そして運転席から、長島が出てきた。 

今日は平日。
知嗣と那留は仕事。
美奈は三人に、仕事を休んで用事に出かけると言って出てきたのだ。

「どうぞ?」
そう言って、後部座席のドアを開けた。

「あ、は、はい」
美奈は頭を下げ、乗り込んだ。

20分程走って、あるマンションに入っていった。
地下駐車場に停め、長島に誘導されながらエレベーターで最上階を目指す。

「あの、ここって……」

「旦那様が“梨良お嬢様のために買った”マンションです」  

「あ、そうなんですね…」

「お嬢様は“あなた方と隠岐原所有の屋敷に住むことになったので”今は誰も住んでませんが」

意味深に言われ、思わず美奈は視線を外した。


そして最上階の部屋に通され、リビングに父親がいた。

「失礼します、美奈さん来られました」
そう言って美奈を父親の向かいのソファに促し、長島は父親の後ろに控えた。

「今日は、お時間を取っていただいてありがとうございます」

「で?
“内密な話”って?」

「…………あの…
単刀直入にお聞きします……!
瀬野川さんは私達の本当の関係はご存知ですか?」

「梨良と知嗣が不倫してること?」

「……っ…」

「那留と君も不倫中だから、ダブル不倫だね」

「やはり、ご存知だったんですか…」

「最初から、知ってるよ」

「え?」

“最初から?”

「ずーっと前から梨良は知嗣と、那留も君と交際していたこと、君達の内緒の不倫シェアのために2年近くかけて那留があの屋敷を建てたことも」

「だったら……」

「だったら?」

「なぜ、そのままにされてるんですか?」

「え?
引き裂いてほしいの?」

「いえ、そうゆうわけでは……」

「引き裂いたら、梨良が拐われるだろ?
知嗣みたいな、何の力もない奴に」

「え?
知嗣さんは、素晴らしい人です!」

「そう?
瀧沢には、何の力もない。
そんな所に、大事な梨良をあげたくない。
まぁ、俺的には隠岐原も嫌なんだけどね。
まぁそれでも、隠岐原ならまだ俺に並ぶことが出来るかな?(笑)」

「梨良を、何だと思ってるんですか?」
思わず、睨みつけてしまう。

「“俺の”娘。
それ以外に何がある?」

「でも、梨良には梨良の幸せが………」


「――――――そんな、綺麗事なんか聞きたくない。
お前に、俺と梨良の何がわかる?」

父親が、鋭い視線と声色で言い放った。

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