高貴な財閥夫婦の秘密
「幸せな式なんだからって、何度も自分に言い聞かせてるんだけど、笑おうとすればする程苦しくなっちゃって……」

「だよな…」

那留にゆっくり背中をさすってもらいながら、ポツリと言葉を吐き出す梨良。

「那留くん」

「ん?」

「…………どうしてかな?」

「何が?」

「どうして、こんなに知くんのことが好きなのかな?」

「梨良…」

「那留くんもとっても素敵な人。
でも、私は知くんが良い!」

「あぁ」

「…………ごめんなさい。
知くんや、那留くん、美奈さんも辛いのは同じなのに……」

「ううん、大丈夫だ」 

「…………那留くん」

「ん?」

「………………もう……帰りたい……」

「梨良…」

「このままじゃ…もっと苦しくなって、自分がもっと醜くなるような気がする。
自分の運命を呪ってしまう…」

梨良の苦しそな訴え。
那留も、切なくなってくる。

那留が従業員に話し、梨良の体調が優れないということにして早めに式を終わらせた。

最後那留と梨良は、参列者達を見送る。
そしてなんとか、笑顔を崩さずに式を終えたのだった。


控室にゆっくり戻る。

「那留くん…」
那留に手を引かれている梨良が、小さく呼んだ。

「ん?」

「………」
顔を寄せた那留に耳打ちする。

“那留くん、お願いがあるの。
きっとウエディングドレス着れるのはこれが最後だから、知くんと二人の写真を撮りたい”

結局お色直しはしてないので、二人はタキシードとウエディングドレス姿だ。

こんな機会、もう二度とない。

那留にお願いすると、那留は微笑んで頷いた。
そして従業員に「少し“二人にしてくれ”」と言った。

少しして―――――知嗣と美奈が、こっそり那留と梨良の控室に入ってきた。

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