雨宮さん家の大型犬〜わんこは何時でも愛する人に忠誠を捧げる〜

faithfuldog

最近…オレのご主人様である…あこちゃんのお気に入りは…とにかく『オレを構って遊ぶコト』…なんだって。


「しーちゃん、しーちゃん!」


悪戯にオレの首に掛けられた太めの赤いリボンの首輪は、あこちゃんの可愛らしい愛の証。

ちょっとだけ、窮屈かなぁなんて思ってたんだけど。


「よしっ!これで、しーちゃんは永遠に、私のモノだね〜!やっぱり似合ってる!可愛い〜」


なーんて、これでもかという程の、全開の微笑みでそう言われてしまったら、多少窮屈でもいいやなんて思ってしまう。

だって…あこちゃんが、俺にとって全てだから…。


二人暮らしになってから、ずっと一緒にお昼寝して、ご飯食べて、互いの空いた時間は全て二人にか出来ない戯れをして…。

オレに触れてくるあこちゃんの手が心地良くて。

ずっとこのままがいいな、なんて…。

何時もそんな風に真剣に思ってる。


「しーちゃ~ん!こっちおいでーっ」


そんな風にオレの名前すら愛おしげに、そして嬉しそうに呼ばれたら、もう尻尾を振るべく早さで行かずにはいられないし。

すぐに傍へ近づいていくオレに、あこちゃんは惜しむことなくキスをくれるから。


「いいなぁ〜。しーちゃんの髪ってば、ふっかふか!あ!そうだ!新しいシャンプー買ってきたの!今日も一緒にお風呂入ろうねー!」


あこちゃんがオレの為に見つけてきてくれたシャンプーは、何時も凄くいい香りのするヤツ。

二人で入るには広いとはお世辞にも言えないお風呂に、ちゃんとオレを連れて入ってくれる。

最初は二人共照れや恥ずかしさがあったけれど、すぐにそれが当たり前になって、今ではなんのためらいもなく、洗っ子をしたりバスタブを泡ぶろにして楽しいバスタイムを過ごしてるんだ。

オレがあこちゃんと一緒に住み始めてから、もう大分経つ。

うちは、両親ともオレのことなんか「男なんだから」なーんて名目で、小さい頃から放ったらかしだった。
だから、あまり愛情というものを感じた事がなくて…。
生まれた所では、こんな風に温かく名前を呼んで貰えることもなかったし。

何より、こんなに愛おしそうにオレを包んでくれる人はいなかったから。


オレの容姿だけを見て擦り寄ってきたり…気分によっては、まるで汚いモノでも扱うようにされて来たこともあるオレ。

そんなオレに、あこちゃんが「一緒に住まない?」って電話をしてきてくれて、あまりにも嬉しくてすぐに……そんな孤独な場所から飛び出したんだ。

でも…あこちゃん以外の愛しかいらないオレは、結構な凶暴犬みたいでしかなくて…。

喧嘩を仕掛けられることも多々あって…。
気付いたら全然知らない道路の脇で、怪我を気にする事もなく、ただ立ち竦むこともしばしばだった。


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