Side Story 〜葉月まい 番外編集〜
午前のショーが始まると、美桜達は余りの観客の多さに踊りながらびっくりしていた。

(すごい、さすがはクリスマスイブ。平日なのにこの賑わい。午前でこれなら夜の部はどうなっちゃうの?)

ショーが終わると一斉に拍手が沸き起こる。

美桜達は、鳴り止まない拍手に応えて何度も頭を下げてから引き揚げた。

「すごかったですねー。もう見渡す限りカップル、カップル、カップルプル」

レッスンルームでクールダウンしながら、綾乃が可愛く首を揺らしながら言う。

「あはは!綾乃ちゃん、可愛ねえ」

智也が目尻を下げて綾乃を見つめると、巧が思わず目をそらした。

「甘っ!おじさん、酒飲みだから甘いもの苦手なんだよ」

美桜はたまらず吹き出した。

「巧くんってば。王子様の衣装着てるんだから、おじさんはやめて」
「でもさ、ショーの最中も飛んで来るわけよ。智也と綾乃のハートビームがビシバシと。その度に俺、うぐっ、やられる……って」

すると綾乃が頬を膨らませる。

「それはちゃんと演技してるからですよ。ショーの間は、お互い恋人同士の設定ですよね?巧先輩もちゃんとラブラブビームを発してくださいね」
「えー、そんな必殺技持ち合わせてないわ」
「だめですよ。巧先輩、ダンスリーダーでしょう?ビームが出せないなら、せめてキラースマイルとかキラキラウインクは?」
「綾乃、どこでそんな技覚えるんだ?」
「自然とやってくれますよ?智也くんは」

ガクッと巧はうなだれる。

「俺、無理……」
「そんなこと言わずに。夜の部はがんばってくださいね。クリスマスイブなんですから、カップル達をキュンとさせなきゃ。ね?智也くん」

綾乃が智也を振り返ると、既に智也は甘い笑顔を浮かべていた。

「うん。俺は夜の部ももちろん、綾乃ちゃんに愛を込めてハートビームを送るからね」
「私も!智也くんにキュンキュンしちゃう」

見つめ合う二人に言葉を失くし、美桜達は静かにレッスンルームをあとにした。
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