Side Story 〜葉月まい 番外編集〜
嵐が去ったあとのように、二人はシーツに包まりながら荒い息を整える。
「ごめん、美桜。大丈夫だった?」
いつもの優しい口調で、アレンがそっと指で美桜の前髪をかき分けた。
「うん、大丈夫」
「ごめんな。俺、美桜を怖がらせてない?」
「大丈夫だよ。でもアレン、いつもより大人っぽくてセクシーで、なんだかドキドキしちゃった」
そう言うと美桜は恥ずかしそうにシーツを顔に引き上げる。
「美桜もいつもより乱れて色っぽかった。だから余計に歯止めがかけられなくて……。あんなに妖艶でセクシーなのは反則だよ」
「ええー!?最初に男の色気を漂わせたのはアレンの方だよ?」
「ごめん。だって、つい思い出しちゃって……」
視線を落とすアレンに、美桜は気になっていたことを聞いてみた。
「アレン、何かあった?今日のアレン、いつもとちょっと違うよ」
「うん、実は……。美桜のショーを観たんだ」
「え?それってさっきの、クリスマスショーのこと?」
「そう。前もって言ったら美桜、緊張するって嫌がるだろうと思って、こっそり人波に紛れて観に行ったんだ。最初は、笑顔でキラキラ踊ってる美桜が見られてただ嬉しかった。可愛いなあって目が離せなくなった。そのうちにだんだん引き込まれていって、うっとり見惚れてた。でも終わった途端に、頭の中に焼き付いた姿が蘇ってきて苦しくなったんだ。美桜、本当の恋人同士に見えたから」
そう言ってアレンはそっと美桜のウエストのラインを手でなぞった。
(あ、巧くんのことか)
美桜はうつむいて考え込む。
ショーでは恋人同士の設定だから、観客にそう見られるようにしなければならない。
だから敢えて見つめ合ったり微笑んだりするように意識している。
それにダンサー同士ならどうってことはないが、客観的に見ると、あんなふうにウエストを抱き寄せて密着して踊るのは、普通では考えられないのだろう。
しかも今回はリフトもあり、巧は美桜のウエストやヒップに手を添えて持ち上げていた。
(いやでもなあ、あれもホントに本人同士は何とも思ってないんだよね。というよりは、必死。涼しそうな顔してるけど、心の中では、よっこいしょ!って感じだもんね)
どう説明すれば伝わるだろう?と思いながら、美桜は口を開く。
「ねえ、アレン。アレンは地元の人達にとって王子様みたいな存在でしょ?ショッピングモールに行ったら、女の子達にあっという間に取り囲まれて。それって、そこからその女の子とつき合うことになったりする?」
急に何の話?とばかりに首を傾げてから、アレンは否定する。
「全くそんなふうに思ったことないよ」
「独身だった頃に、女の子が本気で告白してきても?」
「もちろん。そんな雰囲気になることが考えられない」
「それと同じだよ」
え?とアレンは美桜を見つめた。
「同じって、何が?」
「私もショーで踊ってる時、全くそんなふうに思ったことない。頭の中が仕事モードだから、そんな雰囲気になることが考えられない。ましてや今の私にはアレンがいる。アレン以外の誰のところにも行かないよ。だって私、アレンしか見えてないんだから」
美桜……とアレンは言葉もなく目を潤ませる。
「ごめん、美桜。俺、みっともないこと言って。二度と醜い嫉妬はしないから」
「うん。忘れないでね、私がこんなにもアレンのことを想ってるって」
「ああ。ありがとう、美桜。俺も心から美桜を想ってる」
「良かった。でも……」
そう言って言葉を止めた美桜に、でも?とアレンは不安そうに尋ねる。
「でもね、嫉妬して私を強引に抱いてくれたアレンにも、なんだかちょっとドキドキしちゃった。えへへ。恥ずかしっ」
顔を真っ赤にしてガバッと布団に潜り込んだ美桜に、アレンは一瞬キョトンとしてからクスッと笑った。
同じように布団に潜ると、美桜を抱きしめて顔を寄せる。
「じゃあ、今度からは本気で抱いてもいい?今までは必死に自分を抑えて手加減してたんだ。でも本当はもっともっと深く美桜を愛したいって思ってた」
美桜はボッと一気に顔を赤らめる。
「結婚した時がピークじゃない。結婚してからも、日に日に美桜への愛情が募っていく。優しく守りたいけど、そんな理性も吹き飛ぶくらいに美桜に溺れてる。だから、ありのままに求めてもいい?心も身体も、美桜だけを」
漂うアレンの色気に、美桜はもう目も合わせられずにコツンとアレンの胸におでこをつけた。
「えっと、あの。こういうシラフの時にそのセリフは強烈です。やってる時に言ってくれれば……」
すると今度はアレンが顔を赤らめた。
「み、美桜。やってるって、そんなあからさまな……」
「あ!ごめんなさい。恥ずかしくて、もう、なんて言っていいのか」
アレンは、ふっと笑って美桜の頬に手を添えた。
「そうだね、言葉なんていらない。美桜、目を閉じて」
「うん」
素直に目を閉じる可愛らしい表情に頬を緩めてから、アレンは美桜にそっと口づける。
愛を伝えるように何度もキスを繰り返し、やがて湧き上がる想いのまま美桜を強く抱きしめた。
理性も吹き飛び、抑えも利かない。
ただ美桜に溺れ、感情に流され、アレンは心も身体も美桜を求めて一晩中抱き合った。
「ごめん、美桜。大丈夫だった?」
いつもの優しい口調で、アレンがそっと指で美桜の前髪をかき分けた。
「うん、大丈夫」
「ごめんな。俺、美桜を怖がらせてない?」
「大丈夫だよ。でもアレン、いつもより大人っぽくてセクシーで、なんだかドキドキしちゃった」
そう言うと美桜は恥ずかしそうにシーツを顔に引き上げる。
「美桜もいつもより乱れて色っぽかった。だから余計に歯止めがかけられなくて……。あんなに妖艶でセクシーなのは反則だよ」
「ええー!?最初に男の色気を漂わせたのはアレンの方だよ?」
「ごめん。だって、つい思い出しちゃって……」
視線を落とすアレンに、美桜は気になっていたことを聞いてみた。
「アレン、何かあった?今日のアレン、いつもとちょっと違うよ」
「うん、実は……。美桜のショーを観たんだ」
「え?それってさっきの、クリスマスショーのこと?」
「そう。前もって言ったら美桜、緊張するって嫌がるだろうと思って、こっそり人波に紛れて観に行ったんだ。最初は、笑顔でキラキラ踊ってる美桜が見られてただ嬉しかった。可愛いなあって目が離せなくなった。そのうちにだんだん引き込まれていって、うっとり見惚れてた。でも終わった途端に、頭の中に焼き付いた姿が蘇ってきて苦しくなったんだ。美桜、本当の恋人同士に見えたから」
そう言ってアレンはそっと美桜のウエストのラインを手でなぞった。
(あ、巧くんのことか)
美桜はうつむいて考え込む。
ショーでは恋人同士の設定だから、観客にそう見られるようにしなければならない。
だから敢えて見つめ合ったり微笑んだりするように意識している。
それにダンサー同士ならどうってことはないが、客観的に見ると、あんなふうにウエストを抱き寄せて密着して踊るのは、普通では考えられないのだろう。
しかも今回はリフトもあり、巧は美桜のウエストやヒップに手を添えて持ち上げていた。
(いやでもなあ、あれもホントに本人同士は何とも思ってないんだよね。というよりは、必死。涼しそうな顔してるけど、心の中では、よっこいしょ!って感じだもんね)
どう説明すれば伝わるだろう?と思いながら、美桜は口を開く。
「ねえ、アレン。アレンは地元の人達にとって王子様みたいな存在でしょ?ショッピングモールに行ったら、女の子達にあっという間に取り囲まれて。それって、そこからその女の子とつき合うことになったりする?」
急に何の話?とばかりに首を傾げてから、アレンは否定する。
「全くそんなふうに思ったことないよ」
「独身だった頃に、女の子が本気で告白してきても?」
「もちろん。そんな雰囲気になることが考えられない」
「それと同じだよ」
え?とアレンは美桜を見つめた。
「同じって、何が?」
「私もショーで踊ってる時、全くそんなふうに思ったことない。頭の中が仕事モードだから、そんな雰囲気になることが考えられない。ましてや今の私にはアレンがいる。アレン以外の誰のところにも行かないよ。だって私、アレンしか見えてないんだから」
美桜……とアレンは言葉もなく目を潤ませる。
「ごめん、美桜。俺、みっともないこと言って。二度と醜い嫉妬はしないから」
「うん。忘れないでね、私がこんなにもアレンのことを想ってるって」
「ああ。ありがとう、美桜。俺も心から美桜を想ってる」
「良かった。でも……」
そう言って言葉を止めた美桜に、でも?とアレンは不安そうに尋ねる。
「でもね、嫉妬して私を強引に抱いてくれたアレンにも、なんだかちょっとドキドキしちゃった。えへへ。恥ずかしっ」
顔を真っ赤にしてガバッと布団に潜り込んだ美桜に、アレンは一瞬キョトンとしてからクスッと笑った。
同じように布団に潜ると、美桜を抱きしめて顔を寄せる。
「じゃあ、今度からは本気で抱いてもいい?今までは必死に自分を抑えて手加減してたんだ。でも本当はもっともっと深く美桜を愛したいって思ってた」
美桜はボッと一気に顔を赤らめる。
「結婚した時がピークじゃない。結婚してからも、日に日に美桜への愛情が募っていく。優しく守りたいけど、そんな理性も吹き飛ぶくらいに美桜に溺れてる。だから、ありのままに求めてもいい?心も身体も、美桜だけを」
漂うアレンの色気に、美桜はもう目も合わせられずにコツンとアレンの胸におでこをつけた。
「えっと、あの。こういうシラフの時にそのセリフは強烈です。やってる時に言ってくれれば……」
すると今度はアレンが顔を赤らめた。
「み、美桜。やってるって、そんなあからさまな……」
「あ!ごめんなさい。恥ずかしくて、もう、なんて言っていいのか」
アレンは、ふっと笑って美桜の頬に手を添えた。
「そうだね、言葉なんていらない。美桜、目を閉じて」
「うん」
素直に目を閉じる可愛らしい表情に頬を緩めてから、アレンは美桜にそっと口づける。
愛を伝えるように何度もキスを繰り返し、やがて湧き上がる想いのまま美桜を強く抱きしめた。
理性も吹き飛び、抑えも利かない。
ただ美桜に溺れ、感情に流され、アレンは心も身体も美桜を求めて一晩中抱き合った。