Side Story 〜葉月まい 番外編集〜
「もうちょっと、やだー!みんな、どこ見てんのよ?」
ショーが終わり、みどりが撮影した動画をオフィスで由香に見せていると、由香は苦笑いを浮かべた。
「笑顔で踊ってるけど、明らかに一点集中してるわね」
みどりも、うんうんと頷く。
「そうなのよ。みーんな私の隣に釘付けよ。おかげでターンがめちゃくちゃ綺麗なの。クルッピタッ!って」
「あはは!ホントだ。みんなこんなに綺麗にターンが揃うんだったら、普段からやってよね。いやー、しっかりスポットが定まると、こんなにもぶれないんだね、ピルエットって」
「でしょー?もうさ、アレンさんの等身大パネル作って、いつも観客席に置いておく?」
「そうしよう、そうしよう」
二人は半分真顔で頷き合う。
先程のクリスマスショーをみどりが撮影していると、アレンが「お久しぶりです」と挨拶に来たのだった。
その瞬間、ステージ上のダンサー達の目線はアレンに一点集中。
笑顔で踊りながらも、ショーの最後まで常にアレンに釘付けだったのだ。
「やだ、綾乃ったら目がハートになってるわ」
「そうなの。あの子クールダウンの時も、『アレンさん、超かっこ良かったー』ってうっとり」
「ええー?智也は大丈夫だったの?」
「それが智也も『ホントだよねー、綾乃ちゃん』って、のほほんと」
「うーわ。やっぱりお似合いだわね、あの二人」
その時「失礼します」と、ジャージに着替えた美桜がオフィスに入って来た。
「お、美桜!お疲れ様。どうかした?」
「はい。あの、アレンが改めてお二人にご挨拶したいと。今よろしいでしょうか?」
「どうぞ、どうぞー」
すると美桜は、廊下の端にいたアレンを手招きする。
「失礼いたします。由香先輩、みどり先輩。いつも美桜が大変お世話になっています」
「アレンさん!お久しぶり。まー、相変わらずイケメンねえ。こちらこそ、いつも奥さんをお借りしちゃってごめんなさいね」
「とんでもない。美桜がここでの仕事を続けられて、お二人には本当に感謝しています。これは心ばかりですが、よろしければ皆様でどうぞ」
そう言って大きな紙袋をいくつもテーブルに並べた。
「うわっ!こんなにたくさん?」
「はい。ショートブレッドと紅茶、他にもイギリスの銘菓をいくつか」
「ありがとう!これで年末年始の激務を乗り超えられるわ」
由香とみどりが嬉しそうにお菓子を取り出していると、今度はドラムメジャーの直樹が現れた。
「失礼します。あれ?ひょっとして、美桜の旦那さんですか?」
「うん、そうなの。アレン、こちらは直樹くん。フラッグショーのリーダーなのよ」
紹介されて、アレンは笑顔で直樹に握手を求めた。
「初めまして、アレン・ウォーリングと申します」
「あっ、はい。初めまして、直樹です。いやー、噂には聞いてたけど、まさかこんなにかっこいい方だとは。俺、芸能人と握手してもらった気分だ。すごいなー、美桜」
すごいって何がだろう?と、美桜は苦笑いを浮かべる。
「それより直樹くん、どうかしたの?」
「あ!そうだ、忘れるところだった。このあとのフラッグショーなんだけど、八ポジの圭太が腹壊してトイレにこもりっきりなんだ」
圭太ー!と由香が頭を抱えて声を上げる。
「あいつ夕べ、クリスマスイブのコンパに行くんですー!とか浮かれてたからな。食べ過ぎでしょ?どうせ。全く、自己管理がいつまで経っても甘いんだから」
まあまあと、美桜が由香をなだめていると、直樹が話を続ける。
「本人は出るつもりみたいなんですけど、本番中お腹の急降下が襲って来たら、俺が一番困ります」
「あはは!そうだね。圭太のことだから、どうしましょー?って、涙目で直樹に訴えてくるわね」
「はい、間違いなく。誰か他の人に代わってもらってもいいですか?」
「うん、それがいいよ。えーっと、今日のメンバーで八ポジ出来るのは……」
シフト表を見ながら由香が考え込む。
「んー、智也か。あの子、連日のクリスマスショーで疲れてるし、夜の部も残ってるから可哀想かな。でも他に適任はいないし……」
あの、と美桜は小さく切り出した。
「私でよろしければ、代わりましょうか?」
「え、いいの?」
「はい。八ポジの振りも覚えてますし、夜のショーの体力も充分残ってますから」
「助かるー、ありがと!美桜」
「いいえ。では早速準備しにいきます。直樹くん、よろしくね」
最後に美桜は、アレンに声をかける。
「アレン、ごめんね。ランチはフラッグショーのあとでもいい?」
「もちろん!がんばってね、美桜」
「うん、ありがとう」
「それと、あのさ。よければ動画撮ってもいいかな?メイソン達に送りたいんだ」
あー、と美桜は視線を外して考える。
「そうだね、分かった。でも私をフォーカスして撮らないでね。全体が映るようにしないと、メイソン達の参考にはならないから」
「了解。カメラマン、がんばるよ」
「ふふっ、がんばってね。じゃあ、またあとで」
「うん。フラッグショー、楽しみにしてる」
笑顔で別れると、気持ちを入れ替えて美桜はドレッシングルームに戻った。
ショーが終わり、みどりが撮影した動画をオフィスで由香に見せていると、由香は苦笑いを浮かべた。
「笑顔で踊ってるけど、明らかに一点集中してるわね」
みどりも、うんうんと頷く。
「そうなのよ。みーんな私の隣に釘付けよ。おかげでターンがめちゃくちゃ綺麗なの。クルッピタッ!って」
「あはは!ホントだ。みんなこんなに綺麗にターンが揃うんだったら、普段からやってよね。いやー、しっかりスポットが定まると、こんなにもぶれないんだね、ピルエットって」
「でしょー?もうさ、アレンさんの等身大パネル作って、いつも観客席に置いておく?」
「そうしよう、そうしよう」
二人は半分真顔で頷き合う。
先程のクリスマスショーをみどりが撮影していると、アレンが「お久しぶりです」と挨拶に来たのだった。
その瞬間、ステージ上のダンサー達の目線はアレンに一点集中。
笑顔で踊りながらも、ショーの最後まで常にアレンに釘付けだったのだ。
「やだ、綾乃ったら目がハートになってるわ」
「そうなの。あの子クールダウンの時も、『アレンさん、超かっこ良かったー』ってうっとり」
「ええー?智也は大丈夫だったの?」
「それが智也も『ホントだよねー、綾乃ちゃん』って、のほほんと」
「うーわ。やっぱりお似合いだわね、あの二人」
その時「失礼します」と、ジャージに着替えた美桜がオフィスに入って来た。
「お、美桜!お疲れ様。どうかした?」
「はい。あの、アレンが改めてお二人にご挨拶したいと。今よろしいでしょうか?」
「どうぞ、どうぞー」
すると美桜は、廊下の端にいたアレンを手招きする。
「失礼いたします。由香先輩、みどり先輩。いつも美桜が大変お世話になっています」
「アレンさん!お久しぶり。まー、相変わらずイケメンねえ。こちらこそ、いつも奥さんをお借りしちゃってごめんなさいね」
「とんでもない。美桜がここでの仕事を続けられて、お二人には本当に感謝しています。これは心ばかりですが、よろしければ皆様でどうぞ」
そう言って大きな紙袋をいくつもテーブルに並べた。
「うわっ!こんなにたくさん?」
「はい。ショートブレッドと紅茶、他にもイギリスの銘菓をいくつか」
「ありがとう!これで年末年始の激務を乗り超えられるわ」
由香とみどりが嬉しそうにお菓子を取り出していると、今度はドラムメジャーの直樹が現れた。
「失礼します。あれ?ひょっとして、美桜の旦那さんですか?」
「うん、そうなの。アレン、こちらは直樹くん。フラッグショーのリーダーなのよ」
紹介されて、アレンは笑顔で直樹に握手を求めた。
「初めまして、アレン・ウォーリングと申します」
「あっ、はい。初めまして、直樹です。いやー、噂には聞いてたけど、まさかこんなにかっこいい方だとは。俺、芸能人と握手してもらった気分だ。すごいなー、美桜」
すごいって何がだろう?と、美桜は苦笑いを浮かべる。
「それより直樹くん、どうかしたの?」
「あ!そうだ、忘れるところだった。このあとのフラッグショーなんだけど、八ポジの圭太が腹壊してトイレにこもりっきりなんだ」
圭太ー!と由香が頭を抱えて声を上げる。
「あいつ夕べ、クリスマスイブのコンパに行くんですー!とか浮かれてたからな。食べ過ぎでしょ?どうせ。全く、自己管理がいつまで経っても甘いんだから」
まあまあと、美桜が由香をなだめていると、直樹が話を続ける。
「本人は出るつもりみたいなんですけど、本番中お腹の急降下が襲って来たら、俺が一番困ります」
「あはは!そうだね。圭太のことだから、どうしましょー?って、涙目で直樹に訴えてくるわね」
「はい、間違いなく。誰か他の人に代わってもらってもいいですか?」
「うん、それがいいよ。えーっと、今日のメンバーで八ポジ出来るのは……」
シフト表を見ながら由香が考え込む。
「んー、智也か。あの子、連日のクリスマスショーで疲れてるし、夜の部も残ってるから可哀想かな。でも他に適任はいないし……」
あの、と美桜は小さく切り出した。
「私でよろしければ、代わりましょうか?」
「え、いいの?」
「はい。八ポジの振りも覚えてますし、夜のショーの体力も充分残ってますから」
「助かるー、ありがと!美桜」
「いいえ。では早速準備しにいきます。直樹くん、よろしくね」
最後に美桜は、アレンに声をかける。
「アレン、ごめんね。ランチはフラッグショーのあとでもいい?」
「もちろん!がんばってね、美桜」
「うん、ありがとう」
「それと、あのさ。よければ動画撮ってもいいかな?メイソン達に送りたいんだ」
あー、と美桜は視線を外して考える。
「そうだね、分かった。でも私をフォーカスして撮らないでね。全体が映るようにしないと、メイソン達の参考にはならないから」
「了解。カメラマン、がんばるよ」
「ふふっ、がんばってね。じゃあ、またあとで」
「うん。フラッグショー、楽しみにしてる」
笑顔で別れると、気持ちを入れ替えて美桜はドレッシングルームに戻った。