Side Story 〜葉月まい 番外編集〜
「アレンさん、よかったらこの三脚使って。あと、スタッフジャンパーもどうぞ。これ着てると、優先エリアで撮影出来るから」
ショーが行われる広場で撮影場所を探していたアレンのもとに、由香がやって来た。
「ありがとうございます!助かります」
早速アレンは由香とお揃いのジャンパーを羽織り、三脚を立ててスマートフォンをセットした。
「アレンさん、美桜のショーを観るのは今回が初めてなんですってね」
「そうなんです。先程のクリスマスショーも感激しました」
「奥さん、キラキラに輝いてたでしょう?惚れ直した?」
「はい、それはもう。世界一、眩しかったです」
「やだ、ド直球!仕掛けた私が反撃食らったわ」
ははは、と力なく笑う由香に、アレンは改めて向き直った。
「由香先輩。あの時、退職を申し出た美桜を引き留めてくださって、本当にありがとうございました。今回美桜のショーを観て、俺はなんてことをさせるつもりだったのかと肝を冷やしました。こんなにも生き生きと輝く美桜から、大切な場所を奪おうとしていたなんて……。考えただけでも恐ろしくなります。由香先輩とみどり先輩がいてくださって、本当に良かったです」
「あら、そんな。私達の方こそ、アレンさんに感謝してるの。大切な奥さんなのに、我が社のホープをここに留まらせてくれてありがとう。美桜には本当に助けられてるのよ。イギリスにいてもショーを企画してくれるし、オンラインではミーディングやレッスンにも参加してくれる。イベントの時期には、こうやって帰国してショーにも出演してくれて、後輩達の良き手本となってくれてるの。アレンさんが快く見守って、送り出してくださるおかげよ」
「いえ、そんな。私など何も……。これからもどうぞ美桜をよろしくお願いいたします」
「こちらこそ。どうかこれまで通り、美桜のサポートをよろしくお願いします」
「はい。私に出来ることなら、何でもさせていただきます。ありがとうございます、由香先輩」
笑顔で頷き合った時、ショーが始まるアナウンスが流れてきた。
アレンは録画ボタンを押してから顔を上げる。
美桜の姿を画面越しではなく、直接この目に焼き付けたかった。
やがて力強いホイッスルが聞こえてきて、観客は静まり返る。
ザッと足音を揃え、一糸乱れぬ動きで入場してきた隊列に、その場の空気が変わった。
(え、パレスの護衛隊?)
アレンは一瞬、本気でそう思った。
紺色のショートジャケットにはゴールドの肩章。
真っ白なパレード帽には羽がついている。
身長よりも高いフラッグを携え、キリッとした顔で行進してくるメンバーの中に美桜がいた。
(美桜、かっこいい!)
思わず心の中で呟いたが最後、アレンはファンファーレと共に始まったショーにあっという間に引き込まれた。
瞬きする瞬間さえ見つからない。
ほんのわずかに目をそらすことさえ出来ない。
それほど目まぐるしく、次々と華麗な技が繰り広げられている。
トリックターンでは、まるで何かの魔法にかけられたように、自分の見ているものが錯覚を起こす。
一人ずつフラッグを宙に投げて片手で受け止めるウエーブでは、誰もが息を詰めて見守った。
ダン!と、スネアドラムの音でフィニッシュを決めると、わあ!と一斉に拍手が起こる。
「すごい!美桜、なんてかっこいいんだ」
アレンも興奮を抑えられずに大きな拍手を送った。
ショーが行われる広場で撮影場所を探していたアレンのもとに、由香がやって来た。
「ありがとうございます!助かります」
早速アレンは由香とお揃いのジャンパーを羽織り、三脚を立ててスマートフォンをセットした。
「アレンさん、美桜のショーを観るのは今回が初めてなんですってね」
「そうなんです。先程のクリスマスショーも感激しました」
「奥さん、キラキラに輝いてたでしょう?惚れ直した?」
「はい、それはもう。世界一、眩しかったです」
「やだ、ド直球!仕掛けた私が反撃食らったわ」
ははは、と力なく笑う由香に、アレンは改めて向き直った。
「由香先輩。あの時、退職を申し出た美桜を引き留めてくださって、本当にありがとうございました。今回美桜のショーを観て、俺はなんてことをさせるつもりだったのかと肝を冷やしました。こんなにも生き生きと輝く美桜から、大切な場所を奪おうとしていたなんて……。考えただけでも恐ろしくなります。由香先輩とみどり先輩がいてくださって、本当に良かったです」
「あら、そんな。私達の方こそ、アレンさんに感謝してるの。大切な奥さんなのに、我が社のホープをここに留まらせてくれてありがとう。美桜には本当に助けられてるのよ。イギリスにいてもショーを企画してくれるし、オンラインではミーディングやレッスンにも参加してくれる。イベントの時期には、こうやって帰国してショーにも出演してくれて、後輩達の良き手本となってくれてるの。アレンさんが快く見守って、送り出してくださるおかげよ」
「いえ、そんな。私など何も……。これからもどうぞ美桜をよろしくお願いいたします」
「こちらこそ。どうかこれまで通り、美桜のサポートをよろしくお願いします」
「はい。私に出来ることなら、何でもさせていただきます。ありがとうございます、由香先輩」
笑顔で頷き合った時、ショーが始まるアナウンスが流れてきた。
アレンは録画ボタンを押してから顔を上げる。
美桜の姿を画面越しではなく、直接この目に焼き付けたかった。
やがて力強いホイッスルが聞こえてきて、観客は静まり返る。
ザッと足音を揃え、一糸乱れぬ動きで入場してきた隊列に、その場の空気が変わった。
(え、パレスの護衛隊?)
アレンは一瞬、本気でそう思った。
紺色のショートジャケットにはゴールドの肩章。
真っ白なパレード帽には羽がついている。
身長よりも高いフラッグを携え、キリッとした顔で行進してくるメンバーの中に美桜がいた。
(美桜、かっこいい!)
思わず心の中で呟いたが最後、アレンはファンファーレと共に始まったショーにあっという間に引き込まれた。
瞬きする瞬間さえ見つからない。
ほんのわずかに目をそらすことさえ出来ない。
それほど目まぐるしく、次々と華麗な技が繰り広げられている。
トリックターンでは、まるで何かの魔法にかけられたように、自分の見ているものが錯覚を起こす。
一人ずつフラッグを宙に投げて片手で受け止めるウエーブでは、誰もが息を詰めて見守った。
ダン!と、スネアドラムの音でフィニッシュを決めると、わあ!と一斉に拍手が起こる。
「すごい!美桜、なんてかっこいいんだ」
アレンも興奮を抑えられずに大きな拍手を送った。