Side Story 〜葉月まい 番外編集〜
「美桜様、もう結構ですから。美桜様にこんなことさせられません」

ダンスレッスンのあと、シャワーを浴びてドレスに着替えた美桜は、厨房に来ていた。

ランチの準備をしていたフレディを手伝っていると、フレディは美桜を必死で止めにかかる。

「気にしないで。私がフレディにお料理を教わりたいだけなの」
「ですが、クレアに見つかったらまた私が咎められます」
「見つからないようにするから大丈夫よ。私、逃げ足速いしね。それよりフレディ、このキャロットスープ、隠し味に何か入れてる?生クリームと、あとなんだろう?なんだかほんのり甘いのよね」

味見をしてから、んー、と美桜が首を傾げると、フレディはにこやかに笑う。

「ああ、裏ごししたパンプキンを入れています」
「パンプキン!なるほどー。言われてみれば確かに」

頷いてからもうひと口味見をしようとすると、どこからともなく「美桜様ー?」と呼ぶ声が聞こえてきた。

「大変!クレアだわ。じゃあね、フレディ。ありがとう、またあとで」

はい、と苦笑いを浮かべながら、フレディは厨房を急いで出て行く美桜を見送った。
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