Side Story 〜葉月まい 番外編集〜
「美桜、お疲れ様。はい、ハーブティー」
「ありがとう。アレンもお疲れ様」
その日の夜。
ローズガーデンのコテージで、二人は静かに時間を過ごす。
絵梨と仁は、おそらくフォレストガーデンのバーで飲み明かしているだろう。
美桜とアレンも、明日向こうで合流することになっていた。
「大盛況だったね、フェスティバル。楽しかったな」
「うん。美桜、大人気だったね。色んな人に取り囲まれて。子ども達にも」
「ああ、浴衣効果よね。それにテーマパーク仕込みのバルーンアートの技も」
「なんかさ、俺も親父も霞んでた。この地域の人達にとってウォーリング家って、今や真っ先に美桜のことを思い浮かべるんだろうな」
ええー!?と美桜は慌てて否定した。
「そんな訳ないでしょ?古くからの伝統ある伯爵家だったウォーリング家に、私なんか日本からひょいっとやって来た小娘なのに。しかも由緒正しい血統を乱してしまったって、私、申し訳なくて」
「美桜、そんなこと思ってたの!?」
今度はアレンが驚きの声を上げる。
「何を言ってるの?美桜。誰もそんなこと思ってないよ。大体、昔のことなんて今の人達は知らないし、うちはそんな御大層な家柄じゃない。それに地域の人達も、こんな田舎にお嫁に来てくれるなんてって美桜を大歓迎してる。子ども達なんか、プリンセスミオって呼んでるしね」
「いや、でも。年輩の方は、やっばり快く思ってないかも……」
「みーお」
アレンは両腕の中に美桜を閉じ込めて、真剣に見つめる。
「教会でフルートを演奏する時に、たくさんの人が聴きに来てくれるだろ?その人達が美桜のことを悪く言うなんて思うの?」
「ううん。おじいちゃんもおばあちゃんも、笑顔で優しく声をかけてくれる。素敵だったって」
「でしょ?みんな毎月美桜の演奏会を楽しみにしてる。その人達の言葉を、美桜は信じられない?」
「まさか!とっても幸せで嬉しくなる。私の方こそありがとうって、いつもそう思ってるの」
「それなら相思相愛じゃない。何も心配いらないよ。美桜、これからもこの土地のみんなのことをよろしく頼む。演奏会や、フェスティバルも」
「うん!私もみんなの笑顔が見られて嬉しいから。また色々企画するね」
「ああ」
ようやくホッとしてアレンは美桜に優しく微笑んだ。
「美桜、本当にありがとう。毎日俺は君に感謝する。あの時、飛行機に飛び乗って俺に会いに来てくれて。日本で暮らすと言った俺に、自分がイギリスで暮らすと言ってくれて。今も変わらず、俺だけを想ってくれて、本当にありがとう。俺の一生をかけて、必ず美桜を守り続けるから」
「うん、ありがとう。私も毎日アレンに感謝しています。私の気持ちに寄り添って、やりたいことをやらせてくれて。私を信じて日本に行かせてくれて。いつも優しく私を包み込んでくれて、本当にありがとう。あなたがそばにいてくれるだけで、私は心から幸せでいられるの」
「美桜……。もっともっと幸せにしてみせるから。この先もずっとずっと」
そう言うとアレンは優しく美桜を抱きしめ、愛を込めてキスをする。
抱きしめ合う二人を、窓から降り注ぐ月の光がキラキラと彩っていた。
(完)
「ありがとう。アレンもお疲れ様」
その日の夜。
ローズガーデンのコテージで、二人は静かに時間を過ごす。
絵梨と仁は、おそらくフォレストガーデンのバーで飲み明かしているだろう。
美桜とアレンも、明日向こうで合流することになっていた。
「大盛況だったね、フェスティバル。楽しかったな」
「うん。美桜、大人気だったね。色んな人に取り囲まれて。子ども達にも」
「ああ、浴衣効果よね。それにテーマパーク仕込みのバルーンアートの技も」
「なんかさ、俺も親父も霞んでた。この地域の人達にとってウォーリング家って、今や真っ先に美桜のことを思い浮かべるんだろうな」
ええー!?と美桜は慌てて否定した。
「そんな訳ないでしょ?古くからの伝統ある伯爵家だったウォーリング家に、私なんか日本からひょいっとやって来た小娘なのに。しかも由緒正しい血統を乱してしまったって、私、申し訳なくて」
「美桜、そんなこと思ってたの!?」
今度はアレンが驚きの声を上げる。
「何を言ってるの?美桜。誰もそんなこと思ってないよ。大体、昔のことなんて今の人達は知らないし、うちはそんな御大層な家柄じゃない。それに地域の人達も、こんな田舎にお嫁に来てくれるなんてって美桜を大歓迎してる。子ども達なんか、プリンセスミオって呼んでるしね」
「いや、でも。年輩の方は、やっばり快く思ってないかも……」
「みーお」
アレンは両腕の中に美桜を閉じ込めて、真剣に見つめる。
「教会でフルートを演奏する時に、たくさんの人が聴きに来てくれるだろ?その人達が美桜のことを悪く言うなんて思うの?」
「ううん。おじいちゃんもおばあちゃんも、笑顔で優しく声をかけてくれる。素敵だったって」
「でしょ?みんな毎月美桜の演奏会を楽しみにしてる。その人達の言葉を、美桜は信じられない?」
「まさか!とっても幸せで嬉しくなる。私の方こそありがとうって、いつもそう思ってるの」
「それなら相思相愛じゃない。何も心配いらないよ。美桜、これからもこの土地のみんなのことをよろしく頼む。演奏会や、フェスティバルも」
「うん!私もみんなの笑顔が見られて嬉しいから。また色々企画するね」
「ああ」
ようやくホッとしてアレンは美桜に優しく微笑んだ。
「美桜、本当にありがとう。毎日俺は君に感謝する。あの時、飛行機に飛び乗って俺に会いに来てくれて。日本で暮らすと言った俺に、自分がイギリスで暮らすと言ってくれて。今も変わらず、俺だけを想ってくれて、本当にありがとう。俺の一生をかけて、必ず美桜を守り続けるから」
「うん、ありがとう。私も毎日アレンに感謝しています。私の気持ちに寄り添って、やりたいことをやらせてくれて。私を信じて日本に行かせてくれて。いつも優しく私を包み込んでくれて、本当にありがとう。あなたがそばにいてくれるだけで、私は心から幸せでいられるの」
「美桜……。もっともっと幸せにしてみせるから。この先もずっとずっと」
そう言うとアレンは優しく美桜を抱きしめ、愛を込めてキスをする。
抱きしめ合う二人を、窓から降り注ぐ月の光がキラキラと彩っていた。
(完)