Side Story 〜葉月まい 番外編集〜
美桜と結婚して以降も、アレンはここパレスで父のジョージと、この地域に住む人達の生活を守る仕事をしている。

美桜も自分に出来ることは協力したいと、ささやかながらそのお手伝いをしていた。

今日はランチのあと、メアリーを連れて街の教会へフルートの演奏に行くことになっている。

そして帰りにトムの牧場へ寄り、競馬場の工事の進捗を確認することになっていた。

かつては賑わっていたが、今ではすっかり廃墟と化した競馬場を手入れし、地域の子ども達の為にフェスティバルを開催しようと美桜は考えていたのだった。

広間でジョージやアレンとランチをしながら、そのフェスティバルのことが話題に上がった。

「美桜ちゃん、具体的な催しは何にするつもりなの?」

ジョージの問いに、美桜はフォークとナイフを置いて答える。

「まずは子ども達が楽しめるものをと考えています。イメージとしては、日本のお祭りの屋台ですね。ヨーヨー釣りや輪投げ、綿菓子とか、たこ焼きも。あと、私、テーマパークでバルーンアートをやっているので、それもやろうかなと。風船でうさぎやクマを作るんです」

へえー!とジョージが目を輝かせる。

「日本のお祭りは、私も大好きだったよ。楽しみだな。子ども達、絶対喜ぶよ」
「ふふ、そうだといいですけど。今度一時帰国した時に、材料を仕入れて来ますね。あ、お父様。よかったらハッピ着ませんか?」
「おー!いいね、着る着る!」
「じゃあ、浴衣も一緒に買ってきますね」
「うんうん。ありがとう、美桜ちゃん。楽しみにしてるよ」
「はい!私もとっても楽しみです」

嬉しそうな美桜に、隣に座るアレンは思わず頬を緩めた。

日本から遠く離れたイギリスで暮らす美桜をいつもそばで見守っているが、寂しそうな様子はなく毎日笑顔で過ごしてくれている。

少しでもホームシックになれば、すぐに日本に連れて帰ろうと思っているが、今のところは全くそんな気配すらない。

どうやら本当にここでの暮らしが楽しそうだった。

(それはいいんだけど、俺としてはもっと美桜と一緒にいたいのに)

仕事の合間を縫ってゆっくりおしゃべりしたくても、美桜は毎日忙しそうなのだ。

今日もランチを食べれば、すぐに教会へ行くと言う。

(俺より仕事のことで頭が一杯みたいだな。って、なんか俺、立場が逆かも?)

情けないこと考えてないで、男としてもっとしっかりしなければ、とアレンは気を引き締めた。
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