Side Story 〜葉月まい 番外編集〜
「お帰りなさいませ、美桜様」
「ただいま、クレア」
牧場をあとにしてパレスに帰ってくると、既に夜の九時を過ぎていた。
エントランスで出迎えてくれたクレアに、美桜はコートとフルートを預ける。
「ごめんなさい、すっかり遅くなってしまって」
「いいえ、お疲れ様でございました。美桜様、今夜はどちらでお休みになりますか?」
「そうね、満月だからローズガーデンのお部屋にするわ」
「かしこまりました。暖房は入れてあります。アレン様にも伝えておきますわね」
「ありがとう」
そのままローズガーデンに向かい、奥のコテージに足を踏み入れる。
「あったかい。ありがとう、クレア。今夜はもう大丈夫よ」
「かしこまりました。それでは私はここで。お休みなさいませ、美桜様」
「お休みなさい、クレア」
お辞儀をしたクレアが微笑んで出て行くと、美桜はテーブルの上にあった花瓶の水を入れ替え、教会で女の子からもらった花束を生けた。
「んー、いい香り」
しばらく花に見とれてからバスルームに行くと、既にお湯が張られていた。
「さすがはクレアね」
美桜はシャワーで髪と身体を洗うと、ゆっくりと湯船に浸かる。
「はあ、贅沢だな。至れり尽くせりだし、毎日ホテルで暮らしてるみたい」
一人暮らしをしていたアパートなら、この季節はとにかく寒い寒いを連呼していたが、ここでは全くそんな思いはしなくて済む。
パレスはどこにいても温かく、寝室はその日の気分に合わせてローズガーデンで眠ることも出来るのだ。
アレンも仕事の区切りがついたらここにやって来るだろう。
それまではのんびりくつろいで待つことにした。
身体を温めたあと、バスローブを着て髪を乾かし、ハーブティーを淹れてロフトに上がる。
丸テーブルでフェスティバルの資料を広げながらハーブティーを飲み、時折ガラス窓の向こうの満月に目をやった。
(幸せだな、私。イギリスに来ても毎日が本当に楽しい。日本での仕事も続けられてるし、こっちでのお手伝いもやりがいがある。絵梨ちゃんや仁くんがフォレストガーデンに遊びに来てくれたら会えるし、逆に私が日本に一時帰国すれば数週間は実家で両親と過ごせる。何より、ここでは大好きなアレンとずっと一緒にいられるんだもん。もうこれ以上の幸せって思いつかないよ)
怖いくらいの幸せを噛みしめ、この幸せがいつまでも続きますように、と美桜は満月を見上げて願った。
「ただいま、クレア」
牧場をあとにしてパレスに帰ってくると、既に夜の九時を過ぎていた。
エントランスで出迎えてくれたクレアに、美桜はコートとフルートを預ける。
「ごめんなさい、すっかり遅くなってしまって」
「いいえ、お疲れ様でございました。美桜様、今夜はどちらでお休みになりますか?」
「そうね、満月だからローズガーデンのお部屋にするわ」
「かしこまりました。暖房は入れてあります。アレン様にも伝えておきますわね」
「ありがとう」
そのままローズガーデンに向かい、奥のコテージに足を踏み入れる。
「あったかい。ありがとう、クレア。今夜はもう大丈夫よ」
「かしこまりました。それでは私はここで。お休みなさいませ、美桜様」
「お休みなさい、クレア」
お辞儀をしたクレアが微笑んで出て行くと、美桜はテーブルの上にあった花瓶の水を入れ替え、教会で女の子からもらった花束を生けた。
「んー、いい香り」
しばらく花に見とれてからバスルームに行くと、既にお湯が張られていた。
「さすがはクレアね」
美桜はシャワーで髪と身体を洗うと、ゆっくりと湯船に浸かる。
「はあ、贅沢だな。至れり尽くせりだし、毎日ホテルで暮らしてるみたい」
一人暮らしをしていたアパートなら、この季節はとにかく寒い寒いを連呼していたが、ここでは全くそんな思いはしなくて済む。
パレスはどこにいても温かく、寝室はその日の気分に合わせてローズガーデンで眠ることも出来るのだ。
アレンも仕事の区切りがついたらここにやって来るだろう。
それまではのんびりくつろいで待つことにした。
身体を温めたあと、バスローブを着て髪を乾かし、ハーブティーを淹れてロフトに上がる。
丸テーブルでフェスティバルの資料を広げながらハーブティーを飲み、時折ガラス窓の向こうの満月に目をやった。
(幸せだな、私。イギリスに来ても毎日が本当に楽しい。日本での仕事も続けられてるし、こっちでのお手伝いもやりがいがある。絵梨ちゃんや仁くんがフォレストガーデンに遊びに来てくれたら会えるし、逆に私が日本に一時帰国すれば数週間は実家で両親と過ごせる。何より、ここでは大好きなアレンとずっと一緒にいられるんだもん。もうこれ以上の幸せって思いつかないよ)
怖いくらいの幸せを噛みしめ、この幸せがいつまでも続きますように、と美桜は満月を見上げて願った。