Side Story 〜葉月まい 番外編集〜
「美桜?」
トントンとロフトへの螺旋階段を上がりながら、アレンは呼びかけてみた。
だが返事はない。
なるべく早く仕事を切り上げたが、時刻は夜の十時になっていた。
寝るにはまだ早いが、もしかしたら疲れて眠ってしまったのかも、と思いながら階段を上がり切ると、案の定美桜は丸テーブルに突っ伏していた。
両腕に右の頬を載せ、すうっと気持ち良さそうに眠っている。
アレンは、テーブルの上に広げられているたくさんの資料に目を落とした。
(フェスティバルの為に、こんなに色々と考えてくれて)
もう一度美桜に視線を移すと、愛おしそうにそっと頭をなでる。
切なさが込み上げてきて、たまらず美桜の左頬に口づけた。
ん……、と美桜が小さな吐息をもらす。
「美桜?こんなところで寝てると風邪を引くよ?」
耳元でささやくと、美桜はぼんやりと目を開き、アレンと視線を合わせた。
「アレン」
花開くようにふわっと笑顔を浮かべる美桜に、アレンも思わず微笑み返す。
「ごめんなさい、いつの間にか寝ちゃってて」
「いいよ、お疲れ様。ベッドに行こうか」
そう言ってアレンは美桜を抱き上げると、すぐ後ろのベッドに運んだ。
ゆっくりと美桜を横たえると、アレンはすぐそばに腰掛けて美桜の髪をなでる。
「美桜、いつもありがとう」
「ん?何が?」
美桜はまだ少し眠そうにしながらアレンを見上げて首を傾げた。
無防備であどけない表情の美桜に、アレンの胸はキュッと痛む。
「俺の為にイギリスで暮らしてくれて、その上ウォーリング家の為にも色々尽くしてくれる。本当にどんなに感謝してもしきれないよ、美桜」
「ううん。私の方こそ幸せにしてもらってる。大好きなアレンと一緒にいられて、クレアやメアリーやお父様とも一緒に暮らせて。この地域の人達も、みんな私に優しく接してくれるの。それに日本での仕事も続けさせてもらってるし、夏休みや冬休みにも実家に帰らせてもらってるでしょう?なんだか私のしたいことをぜーんぶ詰め込んだみたいに、私の人生は毎日が贅沢で楽しくて、幸せなの」
だからね、と美桜は可憐に笑う。
「満月にお願いしてたの。ずっとこの幸せが続きますようにって。アレン、この先も一緒にいてくれる?」
美桜、とアレンは切なげに呟いた。
「当たり前だ。俺は絶対に美桜を手放したりしたい。美桜がイギリスに来てくれたことに一生感謝しながら、この先もずっとずっと美桜のそばで美桜を守っていくよ」
「うん、ありがとうアレン」
美桜は笑って両腕を伸ばす。
アレンの首の後ろに回して抱き寄せると、アレンは美桜の前髪をさらりと指先でよけてから額にキスを落とした。
「美桜、やっと二人きりになれた。毎日、昼間はずっと我慢してるんだ。早く美桜を独り占めしたい、早く美桜をこの腕の中に閉じ込めたいって」
「え、そうなの?アレン、ちゃんと仕事してる?」
急に真顔になって聞いてくる美桜に、アレンはしょんぼりと拗ねる。
「なんだよ、そう思ってるのは俺だけ?そうだよね、美桜は仕事の話をしながら楽しそうだし」
「うん。もうあれもやりたい、これもやりたいって、たくさん思いついちゃうの。あー、早くフェスティバルの準備したいな」
宙を見ながらホワンとした表情を浮かべる美桜に、たまらずアレンはキスをした。
「んっ……、アレン?どうしたの?」
「美桜を振り向かせたい。美桜の心の中を俺で一杯にしたい。今だけは」
真剣な表情で真上から見下ろされ、美桜は息を呑む。
「美桜、俺から目をそらさないで」
低い声で告げると、アレンはゆっくりと美桜に顔を寄せていく。
唇と唇が触れそうな距離で動きを止めると、アレンは美桜の瞳をまっすぐ射抜くように見つめた。
「今だけは、俺に溺れて」
そしてアレンは奪うように熱く美桜に口づける。
何度も、何度も。
「んん……」
美桜の唇からもれる甘い吐息に、アレンの全身が一気にカッとなる。
「美桜、好きだ。大好きだよ、俺だけの美桜」
耳元でささやきながら、アレンは美桜の頬や目元、首筋や鎖骨にもキスの雨を降らせた。
美桜のバスローブの胸元を広げてスルリと肩から落とすと、滑らかな肌に指を滑らせ、肩先や胸にもチュッと口づける。
一度顔を上げて美桜の顔を覗き込むと、美桜は頬を上気させて、はあ、と吐息をついた。
その色香にアレンはもはや己を止めることが出来なくなる。
美桜の背中に腕を回してギュッと抱き寄せ、片手で美桜のバスローブの結び目を解くと、胸元に顔をうずめてあちこちにキスを繰り返した。
「……アレン」
吐息交じりに小さく呟いた美桜は、チュッとアレンが蕾を吸い上げた刹那「んんっ」と身体を震わせて仰け反った。
「可愛い、美桜。もっと」
うわ言のようにささやくと、アレンは美桜の身体の隅々まで愛でていく。
美桜はシーツを握りしめながら、アレンの愛情を全身で受け止めて吐息をもらす。
月明かりの中、二人は互いにしっかりと抱きしめ合い、言葉のいらないただ愛だけが広がる世界に酔いしれていた。
トントンとロフトへの螺旋階段を上がりながら、アレンは呼びかけてみた。
だが返事はない。
なるべく早く仕事を切り上げたが、時刻は夜の十時になっていた。
寝るにはまだ早いが、もしかしたら疲れて眠ってしまったのかも、と思いながら階段を上がり切ると、案の定美桜は丸テーブルに突っ伏していた。
両腕に右の頬を載せ、すうっと気持ち良さそうに眠っている。
アレンは、テーブルの上に広げられているたくさんの資料に目を落とした。
(フェスティバルの為に、こんなに色々と考えてくれて)
もう一度美桜に視線を移すと、愛おしそうにそっと頭をなでる。
切なさが込み上げてきて、たまらず美桜の左頬に口づけた。
ん……、と美桜が小さな吐息をもらす。
「美桜?こんなところで寝てると風邪を引くよ?」
耳元でささやくと、美桜はぼんやりと目を開き、アレンと視線を合わせた。
「アレン」
花開くようにふわっと笑顔を浮かべる美桜に、アレンも思わず微笑み返す。
「ごめんなさい、いつの間にか寝ちゃってて」
「いいよ、お疲れ様。ベッドに行こうか」
そう言ってアレンは美桜を抱き上げると、すぐ後ろのベッドに運んだ。
ゆっくりと美桜を横たえると、アレンはすぐそばに腰掛けて美桜の髪をなでる。
「美桜、いつもありがとう」
「ん?何が?」
美桜はまだ少し眠そうにしながらアレンを見上げて首を傾げた。
無防備であどけない表情の美桜に、アレンの胸はキュッと痛む。
「俺の為にイギリスで暮らしてくれて、その上ウォーリング家の為にも色々尽くしてくれる。本当にどんなに感謝してもしきれないよ、美桜」
「ううん。私の方こそ幸せにしてもらってる。大好きなアレンと一緒にいられて、クレアやメアリーやお父様とも一緒に暮らせて。この地域の人達も、みんな私に優しく接してくれるの。それに日本での仕事も続けさせてもらってるし、夏休みや冬休みにも実家に帰らせてもらってるでしょう?なんだか私のしたいことをぜーんぶ詰め込んだみたいに、私の人生は毎日が贅沢で楽しくて、幸せなの」
だからね、と美桜は可憐に笑う。
「満月にお願いしてたの。ずっとこの幸せが続きますようにって。アレン、この先も一緒にいてくれる?」
美桜、とアレンは切なげに呟いた。
「当たり前だ。俺は絶対に美桜を手放したりしたい。美桜がイギリスに来てくれたことに一生感謝しながら、この先もずっとずっと美桜のそばで美桜を守っていくよ」
「うん、ありがとうアレン」
美桜は笑って両腕を伸ばす。
アレンの首の後ろに回して抱き寄せると、アレンは美桜の前髪をさらりと指先でよけてから額にキスを落とした。
「美桜、やっと二人きりになれた。毎日、昼間はずっと我慢してるんだ。早く美桜を独り占めしたい、早く美桜をこの腕の中に閉じ込めたいって」
「え、そうなの?アレン、ちゃんと仕事してる?」
急に真顔になって聞いてくる美桜に、アレンはしょんぼりと拗ねる。
「なんだよ、そう思ってるのは俺だけ?そうだよね、美桜は仕事の話をしながら楽しそうだし」
「うん。もうあれもやりたい、これもやりたいって、たくさん思いついちゃうの。あー、早くフェスティバルの準備したいな」
宙を見ながらホワンとした表情を浮かべる美桜に、たまらずアレンはキスをした。
「んっ……、アレン?どうしたの?」
「美桜を振り向かせたい。美桜の心の中を俺で一杯にしたい。今だけは」
真剣な表情で真上から見下ろされ、美桜は息を呑む。
「美桜、俺から目をそらさないで」
低い声で告げると、アレンはゆっくりと美桜に顔を寄せていく。
唇と唇が触れそうな距離で動きを止めると、アレンは美桜の瞳をまっすぐ射抜くように見つめた。
「今だけは、俺に溺れて」
そしてアレンは奪うように熱く美桜に口づける。
何度も、何度も。
「んん……」
美桜の唇からもれる甘い吐息に、アレンの全身が一気にカッとなる。
「美桜、好きだ。大好きだよ、俺だけの美桜」
耳元でささやきながら、アレンは美桜の頬や目元、首筋や鎖骨にもキスの雨を降らせた。
美桜のバスローブの胸元を広げてスルリと肩から落とすと、滑らかな肌に指を滑らせ、肩先や胸にもチュッと口づける。
一度顔を上げて美桜の顔を覗き込むと、美桜は頬を上気させて、はあ、と吐息をついた。
その色香にアレンはもはや己を止めることが出来なくなる。
美桜の背中に腕を回してギュッと抱き寄せ、片手で美桜のバスローブの結び目を解くと、胸元に顔をうずめてあちこちにキスを繰り返した。
「……アレン」
吐息交じりに小さく呟いた美桜は、チュッとアレンが蕾を吸い上げた刹那「んんっ」と身体を震わせて仰け反った。
「可愛い、美桜。もっと」
うわ言のようにささやくと、アレンは美桜の身体の隅々まで愛でていく。
美桜はシーツを握りしめながら、アレンの愛情を全身で受け止めて吐息をもらす。
月明かりの中、二人は互いにしっかりと抱きしめ合い、言葉のいらないただ愛だけが広がる世界に酔いしれていた。