龍神様と私の幸せな世界
「あ、あの!ここは、どこなのでしょうか…?」
二人の男性は一瞬きょとんとした表情を見せたが、黒髪の男性がぶっきらぼうに言葉を投げる。
「どこって、決まってるだろ。龍神様を祀る、龍水神社だ」
「あ、それは分かっているのですが、」
「は?」
黒髪の男性に睨まれ、椿はびくりと肩を揺らした。
そんな椿のようすを見て、白髪の男性が黒髪の男性を宥める。
「こらこら黎、椿様が怯えていらっしゃるでしょう?すみません、こいつ言葉遣いがなっていなくて…」
白髪の男性の謝罪を聞きながらも、椿はとある点だけが気になっていた。
「あ、あの…今、名前……」
(私のこと、椿様って…名乗っていないはずなのに…)
どうして名前を知られているのだろうか。
椿は目の前の男性二人から少し距離を取った。
「あらま、怖がらせちゃったか」
「はっ、冥だって人のこと言えなかったな」
黎と呼ばれた黒髪の男性が、冥と呼ばれた白髪の男性を小突いた。
するとそこに。
「ああ、椿。ようやく戻ってきたんだね」
おっとりとした空気を身に纏いながら、先程会った白縹色の長髪の男性がやってきた。
「あ、さっきの…」
見れば見るほど見目麗しい男性は、椿ににこりと微笑んだ。
「「水司祢様」」
先程まで賑やかだった黎と冥は一歩下がり、水司祢と呼ばれた男性に頭を下げる。
水司祢はおっとりとした足取りで椿の前へとやってくると、その手を取って歩き出す。