龍神様と私の幸せな世界

「あ、あの!ここは、どこなのでしょうか…?」

 二人の男性は一瞬きょとんとした表情を見せたが、黒髪の男性がぶっきらぼうに言葉を投げる。

「どこって、決まってるだろ。龍神様を祀る、龍水神社だ」
「あ、それは分かっているのですが、」
「は?」

 黒髪の男性に睨まれ、椿はびくりと肩を揺らした。

 そんな椿のようすを見て、白髪の男性が黒髪の男性を宥める。

「こらこら(れい)、椿様が怯えていらっしゃるでしょう?すみません、こいつ言葉遣いがなっていなくて…」

 白髪の男性の謝罪を聞きながらも、椿はとある点だけが気になっていた。

「あ、あの…今、名前……」

(私のこと、椿様って…名乗っていないはずなのに…)

 どうして名前を知られているのだろうか。

 椿は目の前の男性二人から少し距離を取った。

「あらま、怖がらせちゃったか」
「はっ、(めい)だって人のこと言えなかったな」

 黎と呼ばれた黒髪の男性が、冥と呼ばれた白髪の男性を小突いた。

 するとそこに。


「ああ、椿。ようやく戻ってきたんだね」


 おっとりとした空気を身に纏いながら、先程会った白縹色の長髪の男性がやってきた。

「あ、さっきの…」

 見れば見るほど見目麗しい男性は、椿ににこりと微笑んだ。


「「水司祢(みつね)様」」


 先程まで賑やかだった黎と冥は一歩下がり、水司祢と呼ばれた男性に頭を下げる。

 水司祢はおっとりとした足取りで椿の前へとやってくると、その手を取って歩き出す。

< 12 / 24 >

この作品をシェア

pagetop