龍神様と私の幸せな世界
満腹になると、急に眠気がやってきた。
とある小さな一室に案内された椿は、そこで眠ることになった。
畳の上に敷かれたふかふかの布団に、お日様の匂いのする掛布団。
(こんなに贅沢させてもらっていいのかな…)
今にも瞼の落ちそうな椿は、それでも必死に考える。
(ここは本当に私の住んでいた世界じゃないんだ…。私を知っている人は、誰もいないんだ)
厳密には水司祢や黎、冥がいるのだが、彼らを『人』と呼称していいものだろうか。
目を瞑ると、通いなれた龍水神社の境内が網膜に映る。
(水司祢様…、本当に私の願いを叶えてくれたんだ。それに、幸せにする、だなんて…)
水司祢は本気で椿を妻に迎えようとしているようだった。
(神様の奥さんって、何をしたらいいんだろう?どんな役割があるんだろう?)
朝起きたら、やっぱり今日のことは夢で普通に自宅の布団で目を覚ますのかもしれないな。
そんな風に思いながら、椿は眠りに落ちて行った。
穏やかで優しい夜だった。
誰かが優しく椿の頭を撫でてくれているような、そんな心地がして、椿はぐっすりと眠った。