Lovers' melancholy【『WITH』番外続編】
「………………………べ、別に、何も………無かったよ?」
廉の口から晴哉の名前を聞いて思い出したのは、別れ際の一瞬触れただけのキス。
何もヤマシイことなんか無いのに、気付いた時には視線を泳がせて答えた声も、焦りを隠せてなくて。
……何かありました、そう言っているのと同じだった。
「……紗和?その間が、怪しすぎ。何か、あったんだろ?」
「いや、その……、」
廉の表情は笑ってるけど、目が冷たさを帯びていて……絶対に機嫌が悪くなってる。
尚も視線を泳がせたまま、ありのままを話すことが出来ないでいると、
「言わないなら、帰るけど?」
盛大な溜息と共にそう言われて。
私は俯きかけていた顔をハッと上げて、廉と視線を合わせた。