The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「何もせずにはいられないのです。私は、あの悲しみに満ちた国を変えたい。その志で…ルアリスさんに協力しています」

「そうなのか…」

オルタンス殿は、特に驚いている様子はなかった。

…もっと驚くかと思ったんだがな。

この人は、何かに驚くということはあるんだろうか。

なんて、失礼なことを考えてしまった。

まぁ、今更だよな。俺の父だって…憲兵局の参謀長官だったのだから。

「憲兵局を打倒した暁には、暫定政府にセトナ様を推し立てたいと考えています。革命の象徴として」

「成程…。確かに、民衆の大義の為に、分かりやすい象徴は不可欠だな」

それには、セトナ様が相応しい。

俺では駄目だ。俺には…血筋がない。そんな器ではないのだ。

だからこそ、セトナ様は絶対に守らなければならない。

セトナ様が革命軍に参加しているとなれば、憲兵局も、民衆も、『青薔薇解放戦線』を単なる烏合の衆だとは思うまい。

「私からもお礼を言わせてください、オルタンス様。帝国騎士団が『青薔薇解放戦線』に協力してくださること、心から感謝します」

セトナ様は、そう言って深々と頭を下げた。

最初の頃は、あのディルクの娘が、人に対してこのように頭を下げることが出来るなんて信じられなかったものだ。

しかし、オルタンス殿はやっぱり、顔色一つ変えない。

「礼を言うなら、ルーシッドに言ってくれ。決めたのは俺ではなく、彼だからな」

え…そうなのか。

でも、最終的な決定を下したのはあなたなのでは?

「革命軍のリーダーの顔が見れて良かった。こんな若者がいるなら、箱庭帝国の未来は明るいだろう…。少し羨ましいな。ルティス帝国の若者は…このままでは、黒くてエロティックな未来に染まってしまいそうだ」

「…はい?」

「いや、何でもない。未来が明るいのは良いことだ」

オルタンス殿は、謎の台詞を残して、面会を終えた。

取り残された俺とセトナ様は、互いに無言で顔を見合わせた。

…意外に、話しやすそうな人だったのは良かったけど。

…正直、掴み所がなくて…反応に困る人だった。
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