The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
マフィアの幹部と聞いて、俺が予想していたのは…顔に傷があって、人を殺せそうなほど鋭い目付きをした、強面の筋骨隆々な男性であった。

オルタンス殿と言い、俺は偏見の塊だな。

そうだというのにこの人は、まるで…まるでマフィアの幹部には見えない。

どちらかと言うと…夜の世界の重鎮、って感じだ。

「はぁ、ルルシー…。あなたとのハネムーンが待ち遠しいです。何処に行きますか?船旅にします?それとも空の旅?」

「行かねーよ…」

「えー。ルルシーは新婚旅行しない派ですか?じゃあそのぶん結婚式を豪華に…」

「そういう意味じゃないって、何回言えば分かるんだ。ったく…」

嘆かわしい、と溜め息をつく青年。

ルルシー…って名前なのか。ということはこの人が、ルルシー・エンタルーシア?

ヴァルタの上司だった幹部だ。

「大体、人の前でやるな。見てみろ。客人がぽかんとしてるだろうが」

「は?いたんですか、そんなの」

ルレイア殿は、路端の石ころでも見るような顔で俺を見下ろした。

いたんですか、って…。

「あぁ、そういやなんか来るって言ってましたねぇ…。何ですか?あなた」

彼はようやく、俺に意識を割いてくれたようだった。

このチャンスを活かさない手はない。

「あ、えと…はい。俺、『青薔薇解放戦線』の…ルアリス・ドール・エーレンフェルトと言います」

「『青薔薇解放戦線』?あぁ…箱庭帝国の革命軍ですか」

めちゃくちゃどうでも良さそうだが、一応俺達のことを覚えていてくれたようだ。

良かった。

「その革命軍が、俺に何の用ですか?」

「こら、ルレイア…。一応客人だぞ。もっと礼儀正しくしろ」

ルルシー殿がルレイア殿の額をこつん、とぶった。

すると。

「!DVですねルルシー?良いですよ、アリですよルルシー。俺は旦那様の後ろに一歩下がって付き従う、古風な嫁になります」

「…」

ジトッ、とルレイア殿を睨むルルシー殿。

きらきらと目を輝かせるルレイア殿に、ルルシー殿は溜め息をついて、俺に向き直った。

「済まないな、こんな奴で…。悪意はないから許してくれ」

「あ、い、いえ…大丈夫です」

そういう人なんだ。オルタンス殿を思い出せ。

ルティス帝国は、そういう国なんだ。そう理解しよう。
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