The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
『青薔薇連合会』からの助力は、やはり得られないと分かったが。

だからと言って、俺は革命を諦めるつもりは全くない。

彼らがいなくても、何としてもやり遂げてみせる。

まず俺が取り組んだのは、憲兵局に対する講和の申し込みである。

講和の条件については、『青薔薇解放戦線』の皆と話し合って決めることにした。






「まず第一に必要なのは、開国だ」

これだけは、絶対に譲れない。

あの閉鎖された国を解放することが、俺の悲願だ。

「それと…憲兵局の解体じゃな」

と、ミルミル。

開国は即ち、憲兵局の解体に繋がる。

奴らの独裁体制から、箱庭帝国を解放する。

そして、主権を国民の手に返すのだ。

「だが…当面の混乱に対処する為の、治安維持部隊は必要じゃないか?」

ヴァルタが、俺に向かってそう提言した。

「そうだな。でもそれは…俺達『解体戦線』が対応すべきだ。憲兵局じゃない」

俺がそう答えると、ラシュナもそれに同意した。

「憲兵局には、完全に武装解除してもらわなくては」

「…武装解除か。武器を振りかざして人に言うことを聞かせていた連中が、武器を捨てろと言われて従うものかな」

「…」

言い返す言葉がない。ヴァルタの言葉が耳に痛い。

憲兵局が現状持っている、莫大で絶対的な権力。

それを一日にして放棄しろなんて、彼らは納得しないだろう。

でも…納得してもらわなくては困る。

「それから…大将軍ディルク・フォルカーティンにも、退いて頂かなくては」

彼こそ、独裁体制の象徴。

大将軍には、絶対に退いてもらう。

ちらりとセトナ様を見ると、彼女は据わった目をして、深く頷いた。

自身の父を失脚させようとしている俺のことを、どう思っているのかは分からないが…。

少なくともセトナ様は、ご自身のやるべきことを理解している。

すると、ミルミルが小さく挙手して、こう尋ねた。

「そのことじゃが、ルアリス。そなた、ディルク以下、元憲兵局局員の処遇についてはどうするつもりじゃ?」

「処遇?」

「あぁ。辞めさせた局員をどうする?国を荒らした戦犯として、全員処刑する気か?」

まさか。

「とんでもない。そんなことをすれば、俺達は第二の憲兵局になってしまう」

それでは、革命を起こした意味がない。

俺達は、憲兵局の残虐なやり方を改革するのだ。

「俺は新しい箱庭帝国で、死刑制度を廃止するつもりだ」

「…ディルクも、憲兵局局員も、全員生かすつもりか」

「あぁ。彼らを殺しては、俺達も憲兵局と同じになる」

あんな野蛮な制度は…すぐにでもなくす。

「では、元憲兵局員はどうするのじゃ?無罪放免か」

表向きは…無罪放免、ということになるだろう。

しかし。

「…今まで特権階級だった者達が、いきなり一般市民にされるんだ。それだけで、充分な罰になるだろう」

「…そうじゃな」

死んだ方がまし、と思うくらいには…辛い毎日が待っているだろう。

でも、そうでもしなければ…国民達は納得しない。

勧善懲悪でなくてはならないのだ。それが正義だから。

しかし、ヴァルタは。

「甘いな…。せめてディルクは殺した方が良いんじゃないか?」

「ヴァルタ…」

セトナ様もいるのに、と思ったが…ヴァルタは容赦なかった。

「箱庭帝国が新体制に移行するというのに、旧体制の象徴であるディルクが生きているのは不味いだろう。私達を恨んだディルクと、元憲兵局員達が結託でもすれば、最悪国が二つに割れるぞ」

「…」

…それだけは、絶対に避けなければならない事態だろう。
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