The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
実際、ヴァルタの言うことは、充分に有り得ることだった。

ディルクを生かしておけば、彼と、元憲兵局員が結託して、また国が割れる。

ディルクなら…恐らく、やるだろう。

でもディルクを殺せば…そのリスクはぐんと下がる。

俺だって、それは分かっている。

分かっているけど。

「公然に処刑しなくても…事故に見せかけて殺すことは出来る。最悪国外追放でも、やらないよりはましだ」

「厳しいようじゃが…ヴァルタの言うことはもっともじゃな」

「えぇ…。仕方ないと思うわ」

ヴァルタの意見に、ミルミルもラシュナも賛同した。

更に。

「ディルクが生きてるのは不味いでしょ。あいつは、箱庭帝国の独裁体制そのものじゃない。面倒だけど…やっぱり殺した方が後々楽だと思う」

普段はあまり発言をしない、面倒臭がり屋のヴィニアスでさえ、ヴァルタの意見に賛成だった。

ついでに、俺の傍らに控えていたユーレイリーまでも。

「…坊っちゃん。私などが意見するのはおこがましいですが…。私も、ヴァルタ様の意見に賛成です」

「ユーレイリー…」

「ディルクを生かしておくのは、あまりに危険です」

「…」

…皆、そう思うか。

そうだろうな。彼こそ…国民を苦しめる元凶なのだから。

「…ルアリスさん。私のことは気にしないでください。父はそれだけのことをしたんです。殺されても文句は言えません」

「…セトナ様…」

セトナ様まで。

大将軍を殺せ…か。

確かに、それが一番…正しいのだろうな。

でも…でも、俺は。

「…正義を行う為に人の命を奪うのは、正義だと言えるんだろうか」

俺はどうしても…そう思ってしまうのだ。

かの革命で…あの伝記の、英雄は。

あの英雄は…敵の総大将を殺したりはしなかった。

善も悪も、清も濁も全て飲み込んで、平和を取り戻したのだ。

俺の目指す革命は、汚いものを切り落として綺麗にするのではなく。

汚いものを切り落とさずに…綺麗にすることで…本当の平和を築くことなのだ。

「…俺は、憲兵局とは違うやり方で革命を成功させたい。ディルクを処刑するか、しないかについては…もう少し考えさせてくれ」

「…」

リーダーとして、甘いことを言っている自覚はある。

それでも、要らないものを切り捨てるやり方では…駄目なのだ。

それは、俺の目指す正義ではない。

「…仕方ない男だな。全く…」

ヴァルタは、呆れたように嘆息した。

「ルアリスらしいわ。あなたは…それで良いと思う」

「だからこそ、革命軍のリーダー足り得るのじゃろうな」

「皆…ありがとう」

こんな、情けないリーダーについてきてくれて。

「まぁ、大将軍を生かすも殺すも…その前にまず、革命を成功させなきゃ話にならないもんね」

と、ヴィニアス。

確かに。ヴィニアスの言う通り。

その前に、講和の条件をまとめなくては。

「講和が平和的にまとまれば…一人の死者も出さずに済む可能性だってありますものね」

皆に希望を持たせるように、セトナ様が言った。

そうだ。俺達が講和の条件をしっかり考えて提示すれば…一人の死者も出さずに事が終わる可能性だってある。

戦わずに済むかもしれないのだ。

「よし。じゃあ…会議を進めよう」

願わくば、この講和を…憲兵局が受けてくれますように。
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